長さ日本一の上越市高田の雁木は猛暑にも有効 専門家が新たな視点提唱「夏でも使える」
雪国の冬の通行を確保するための新潟県上越市高田の雁木が、夏の猛暑対策にも有効であることに着目したシンポジウムがこのほど、上越市本町6の町家交流館高田小町で開かれた。本来は豪雪対策で造られた雁木が猛暑の直射日光を遮ることで熱中症予防にもつながるとして、「暑さに強い町」としてのアピールも提案された。
雁木は家から張り出した軒や庇(ひさし)で、豪雪地の高田の市街地では、城下町が形成された江戸時代から雪や雨から歩行者を守る雁木が連なっている。現存する雁木の総延長は約12kmで、日本一の長さがあり歴史ある町並みが残るほか、雁木と雁木下は私有地でありながら誰もが自由に歩道として利用していることから、郷土の先人が生み出した文化として保存活動も行われている。
シンポジウムは日本雪工学会上信越支部が主催し、2024年11月24日に開かれた。雪国の雁木を歴史的・文化的な観点とは異なる環境的な視点から再評価しようと、市民や関係者など約20人が参加した。
この中で、日本ヒートアイランド学会会長で建築環境工学などが専門の三坂育正武蔵野大教授は、熱中症の予防には体に熱を貯めないよう体感温度の涼しい場所を選ぶことが重要で、まちなかでは日射を遮蔽する空間が必要とした。雁木通りは日陰空間が連続し、2018年に高田で行った調査では、28度を超えると熱中症患者が増えるとされる「暑さ指数(WBGT)」が雁木の外は28.2度に対し雁木下は26.5度だったと報告した。
三坂教授は「今まで雪に強い町として宣伝してきたと思うが、さらに“暑さに強い町”を加えて、気候変動に対応した町としてアピールしてほしい。雁木を誇りに思っている人は多いので、“夏でも使える”ということを市民にピーアールしていき、雁木を熱中症リスクを低減した観光資源としての活用も期待できるのでは」などと話した。
会場からの意見やパネルディスカッションでは、「所々雁木が欠けてしまっているのは、風通しがよくなるプラスに捉えられるのではないか」「夏でも町全体で歩ける空間になっていることを積極的に発信できたらいい」などの声が上がっていた。
記事参照元:上越タウンジャーナル