回顧2024年 上越タウンジャーナル記者トーク(1)
2024年も残り少なくなりました。今年も「上越タウンジャーナル」をご愛読いただき、ありがとうございました。今年1年間、新潟県上越地域で起きたいろいろなニュースを振り返り、エピソードを交えながらトークを繰り広げます。今日はその1回目です。
能登半島地震で始まった1年
記者A 今年は何と言っても、元日に発生した能登半島地震。正月から地震とは正に「天災は忘れた頃にやって来る」を実感した。過去約20年間で上越市は中越地震、中越沖地震、長野県北部地震を経験してきたが、今回、同市では初めて津波被害が発生した。
記者B 地震発生から一夜明け、なおえつ海水浴場が津波に飲み込まれたと聞いて、現地に向かった。直江津で津波が発生するなんて思ってもなかったから、今まで見たことのない光景に言葉を失った。気象庁によると地震による津波の高さは遡上高が4.5mだったそう。
記者A 夏場に海の家が立ち並ぶ砂浜や砂浜脇の市道には材木や砂、トタン、コンテナ、冷蔵庫などの家電も散乱していた。売店脇の自販機も流されていたし、建物内にも大量の海水が流入したのがすぐに分かった。
記者C 現地でなおえつ浜茶屋組合の桑原尚二組合長と話したが、普段は明るい人だけれど、「どうしたらいいのだろう」と砂浜を見つめる姿が切なかったな。
記者A 地震から1か月後には「必ず夏には海水浴場を開設する」と言っていたし、高田城址公園観桜会では夏の営業をピーアールするため、組合として初めてグルメブースを出店し、自ら腕をふるってオリジナル焼きそばを販売していた。お客からは「頑張って」とたくさんの声が掛かり、連日とてもにぎわっていたのが印象的だった。
記者B 関係者によるとなおえつ海水浴場の被害総額は約1億円。資金繰りのめどが立たなかった2軒が営業を断念したが、市は今夏は万が一の津波に備え、避難用階段を砂浜近くに2か所設置するなど、すぐに安全対策に取り組んでいたよね。
記者C 「安心して海を楽しんでほしい」という関係者たちの強い思いを感じたし、オープン後、家族連れなどが笑顔で海水浴を楽しんでいる姿を見て、その努力の表れを実感した。9月には復興を願う花火大会も開かれ、とても感動した。来年以降も応援を続けたいと思う。
記者A 能登半島地震の津波では被害以外に住民の避難行動が課題となった。津波の襲来を恐れ、車で避難する人が多く幹線道路が渋滞してしまった。
記者B 今月公表された能登半島地震の災害対応の検証結果で、市は各家庭に配布されているハザードマップの浸水想定地域外にいれば避難は必要ないことや、原則徒歩とする正しい避難行動が市民に浸透していなかったとし、今後啓発活動を強化するとしている。一方で、徒歩での避難が難しい高齢者らが逃げるのを諦めた例もあったことから、避難方法を見直し、原則徒歩としつつも高齢者や障害者などの避難行動要支援者などに限り車での避難も可能とした。
記者C 市によると、沿岸部の6町内会が車による津波避難計画を策定した。高齢化はどんどん進んでいて、今徒歩で避難できる人も3年後、5年後はどうなるかわからない。毎年の訓練と住民の状況把握が欠かせないだろう。
記者B 大潟区の鵜の浜海岸の砂浜流出も海岸浸食という自然災害。人魚像の一時撤去の取材で1月中旬に現地に行った時はまだ砂浜はあったのに、3月には広範囲にわたって砂浜がなくなり無惨な姿になっていた。
記者A 今夏は砂の搬入で海水浴場が開設できたが、今また冬の波浪が心配な時期になった。隣の雁子浜海岸の沖合に建設される離岸堤が完成するまでには10年近くかかり、毎年砂を搬入できるとも限らない。
記者B 海岸浸食が進むと、海水浴という観光だけでなく、防災上での影響も懸念される。実際に能登半島地震では、鵜の浜海水浴場の暴風壁付近にまで津波によって流されてきたと思われる漂着物があった。海岸浸食の問題は全国各地で起きており、今以上に国の支援が必要なのではないだろうか。
高田の建物密集地で火災相次ぐ
記者C 古い町家が立ち並ぶ高田の本町では、火災が相次いで発生した。2月に本町6で4棟全焼、3月は本町1で8棟全焼、10月は本町2で6棟が全焼した。
記者B 町家は隣接する家同士で壁を共有していたり、建築基準法制定前に建てられた防火構造のない建物も多かったりして延焼しやすい。隣と近接しているから前と後ろの2方向からしか放水できず、火元も分かりにくくて消火も難しい。
記者A 本町の火災もどれも鎮火まで4、5時間かかった。一旦鎮火したように見えても、一夜明けて現場に行ったら、まだ白い煙が出て放水したりしていて、消火の難しさを感じたね。
記者B だからこそ住民の防火意識は高く、火災を受けて開かれた消防局主催の住民向け防火座談会や、住民参加型の消防訓練では、「火事を出したら(燃えるのは)1軒では済まない」「とにかく火元にならないことが大事」という切実な声を参加者から聞いた。それでも大きな火災が続いた一因に人口減少は挙げられるだろう。
記者C 今回の火災3件の内、2件は空き家が火元とされている。維持管理できていない建物は脆くなり燃えやすくなるし、当たり前だけど地域に住民が少なくなればそれだけ火災に気付くのも遅くなる。観光資源として行政も保全に力を入れている高田の町家や雁木を焼失させないためにも、今後加速するであろう人口減少問題と併せた防火対策が迫られている。
空き家、古民家活用さまざま
記者A 空き家が問題となる中だが、その活用もさまざま見られた。妙高市では築120年の古民家を改装した一棟貸しの宿「MAHORA西野谷」、上越市ではパッケージクラフトのギャラリー「空のおもちゃ箱」、子ども食堂やコワーキングスペースなどの多機能施設「清里いばしょベース Cha-ya」、農村暮らしなどが体験できる農家民宿「水草たなか」がオープンした。それぞれ元の建物の雰囲気を生かしつつ、今あるものの有効活用や地域の活性化につなげたいというコンセプトが同じだ。
記者B かつての自宅や実家を再利用した例もあった。牧区の山あいには自宅としていた建物をオーナー自らが改修した民泊「コサクレム」が、大町の雁木通りには、空き家だった実家を改装した「ハンバーグ&グリルYUKIMI」が誕生した。
記者C 近年町家での出店が多く、YUKIMIもSNSで実家の近くでの出店例を知り、Uターンを機に東京都で営んでいた店の移転も決めたそう。町家は特に雁木のつながりもあってか出店者同士の交流があり、一緒に一帯を盛り上げようという結束感がある印象。とても良い動きだと思う。
老舗の閉店、市施設の廃止も
記者A 残念だけれど閉店や施設の廃止などもあった。上越市内では老舗和菓子店の「新三野屋商店」、上越大通りで20年営業した「原信土橋店」が閉店。全国的なブームの中出店した高級食パン専門店「おい!なんだこれは!」は6月に、「銀座に志かわ上越店」も今年いっぱいで閉店が決まっている。
記者B 利用者の減少で半世紀以上にわたり放送と通話サービスを提供してきた「公益社団法人上越市有線放送電話協会」は解散、一般財団法人新潟県教職員互助会運営の会議、研修、宴会施設「高陽荘」も閉館した。市の施設では市民に親しまれた「春日山荘」が閉館、「こどもプール」「海洋フィッシングセンター」も本年度で廃止される。
記者C 閉店ではないけれど老舗和菓子店の「大杉屋惣兵衛」は430年以上にわたって続いたあめの製造を終了した。それぞれ人口減少や後継者問題、老朽化、ニーズの変化など理由はさまざまだが、伝統ある店や事業がなくなるのは寂しい。
わいせつ事件目立った1年
記者B 今年は女性が狙われるなどのわいせつ事件の発生が目立ったと思う。
記者A わいせつ行為に及ぼうと大通りを歩いていた女性を車に押し込んで監禁したり、同意なく知人女性の下半身を触ったり。ショッピングセンターの駐車場では女性に刃物を見せ、「切るよ」「刺すよ」と脅してわいせつ行為をしようとした事件もあった。
記者C 飲食店のドライブスルーで陰部を露出する男や全裸でホームセンターにいた男も逮捕されたし、自らの全裸姿を車のヘッドライトで照らし、通報、逮捕された事件もあった。
記者B 上越警察署の61歳留置管理課巡査部長が不同意わいせつの疑いで逮捕、起訴され12月には懲戒免職処分となった。これまで懸命に働いてきただろうに、人生を棒に振ったね。
記者A 被害者たちは本当に怖かったと思う。加害者たちはしっかりと反省し、事件を繰り返さないでほしい。
<つづく>
記事参照元:上越タウンジャーナル