回顧2024年 上越タウンジャーナル記者トーク(3)
今年1年を振り返る記者トークの前日からの続きです。
幸せの象徴「コウノトリ」
記者A ここからは明るい話題。吉川区での国の特別天然記念物コウノトリのひな誕生は、取材も大変だったが、貴重な経験だった。最初の巣を放棄した時はダメかと思ったが、よかった。
記者B 撮影には巣から150m以上離れる必要があり、農道にも入れない。高価な望遠レンズはないので、超望遠撮影ができるコンパクトデジタルカメラを購入し、なんとかひなの姿を撮影できた。ひなが小さい時は巣の中に頭が隠れたり、数羽が重なったりで、4羽の姿を一枚に収めるのに苦労した。
記者C それにしても営巣確認から毎日観察を続け、フェイスブックやブログで発信した吉川区在住で市議の橋爪法一さんには脱帽。選挙もあったのに、議員活動もきちんとやりながら、時には数時間も観察を続けるなど、もはや専門家だ。
記者A つがいはひなが巣立った後も上越にとどまっていて、来年もひな誕生が期待される。他県では人工巣塔や観察カメラを設置している所も多く、YouTubeで配信していて、とても参考になった。県内初のことでもあり、上越市も設置したらどうか。
パリ五輪・パラ代表 地元に感動
記者B スポーツ選手の活躍からも大きな感動をもらった。パリ五輪陸上女子1万mには妙高市出身の小海遥選手(21、第一生命グループ)が出場し、自身初の出場ながらも大舞台で堂々とした走りを見せてくれた。
記者A 妙高市では初の夏季五輪代表の誕生に、応援の熱も入ったようだ。母校の児童生徒が寄せ書きを贈ったほか、市主催のパブリックビューイングには、午前4時前のレーススタートにもかかわらず、市民ら150人が集まり声援を送った。
記者C 朝早い取材だったけれど、大声援に目が覚めた。恩師や同級生などが次々とマイクを握ってエールを送ったり、司会の市職員は感極まって涙ぐんだりと、良い意味でかなりアットホームだった。小海選手の走りに感動したのはもちろん、地域全体で応援しようという熱意も伝わってきて温かい気持ちになった。後日、小海選手が市長を表敬訪問した際には、職員や市民の熱烈な歓迎に圧倒されているような印象すら感じたけれど、それも含めて微笑ましかった。
記者A 上越市からは前回の東京大会に続き、パリ・パラリンピック競泳に視覚障害が最も重いクラスの石浦智美選手(36、伊藤忠丸紅鉄鋼)が出場。4種目に出て、個人と団体の2種目で入賞する快挙だった。
記者C パリから帰国後、市長や母校を訪問したが、取材するたびにその人柄に親しみを感じる。よく話すまっすぐな性格で、子どもたちの無邪気な質問にも明るく返す。今回はプレッシャーも大きく本人にとって悔しい結果だったようだが、石浦選手らしい前向きな気持ちで次も頑張ってほしい。
記者B 個人的に少し残念だったのは、妙高市と上越市の応援の温度差。「オリ」と「パラ」の注目度の違いかもしれないが、パブリックビューイングもあり、SNSなどで市民への情報発信が多かった妙高市に比べ、上越市はパラ出場内定時に市役所に懸垂幕を掲出したのみ。ホームページは石浦選手の出場レースが全て終わってからの結果掲載だった。時差の関係でレースは夜中で誰でもテレビ観戦できる時間帯ではなかったが、「日の丸」を背負って世界で戦う上越出身の選手に、古里の上越市としてもう少し何かできることがあったのでは。
記者A 石浦選手は残念ながら目指していたメダル獲得はならなかったが、世界ランキング1位で臨んだ種目もあった。せめてホームページや広報紙で事前に紹介するとか、公式LINEで市民にレース日時を知らせるとか、あってもよかったと思う。
県内初世界遺産登録「佐渡島の金山」
記者C その年の世相を漢字1文字で表す「今年の漢字」は「金」。その理由の一つにも挙げられたのが「佐渡島(さど)の金山」の世界遺産登録だったが、上越地域にとってもうれしい知らせだった。
記者A 佐渡への航路を持つ上越市では登録を後押ししようと、高田城三重櫓のライトアップや市民主催のパブリックビューイングが、決定後にはピーアールを図りラッピングバスの運行やグッズ制作、イベントなどが行われた。
記者B 継続的な宿泊や観光需要の高まりが予想される中、来年は上越妙高駅が開業して10周年を迎える。敦賀延伸もあって関西方面からのアクセスも少し良くなった。“西の玄関口”として自治体や地域が一体となって盛り上げていけるような施策、取り組みに期待したい。
観桜会、謙信公祭は第100回に向け期待
記者A 上越市の春と夏の一大イベント、「高田城址公園観桜会」と「謙信公祭」は来年の第100回に向けた取り組みが行われた。観桜会ではオープントップバス「宙バス」の試乗会が行われ、謙信公祭では9年ぶりのゲストとして元宝塚歌劇団男役で新潟市出身の越乃リュウさんが謙信役を務めた。来年はどんな祭りになるのかと期待が高まる1年だった。
記者B 記念事業として、観桜会では「宙バス」の運行、高田駅前と市立歴史博物館でのプロジェクションマッピング、謙信公祭では芸能人ゲストの招へい、テレビ東京の人気番組「開運! なんでも鑑定団」の「出張なんでも鑑定団in上越」の収録放送が予定されている。宙バスの試乗会を取材したとき桜がまだ咲き始めで、ほとんど花がなくて残念だったけれど、風を受けながらの走りは爽快で、満開のときに乗れば眺めも最高だろう。
記者A 謙信公祭のゲストは誰になるのか。個人的には上杉謙信の愛刀で国宝の「山鳥毛」の展示が楽しみだ。所有する岡山県瀬戸内市に借用依頼し、日程などを含め協議中とのことだが、市民や県民など多くの人の目に触れる機会になれば素晴らしい。
記者C 上越市の訪問団とともに備前長船刀剣博物館で実物を見たが、刀に詳しくなくてもその特徴的な刃文などから風格を感じた。駅前やタクシー、レンタサイクルなども山鳥毛仕様に装飾されていたり、市民がオリジナルグッズの店を出店したりと、まちを上げて観光客を迎える姿勢があった。上越市での展示がかなった際にはその厚意に応えて同様に盛り上げ、謙信の故郷と刀の古里として、ぜひ瀬戸内市とは交流を続けてほしいと思う。
記者B 観桜会、謙信公祭が節目を迎えるのと同時に、上越市は来年合併20周年、前述した上越妙高駅開業10周年、第50回上越まつりなど八つの記念が重なることから「アニバーサリーイヤー」と位置付けている。明るい話題が多そうだが、どんな年になるだろうか。
<おわり>
記事参照元:上越タウンジャーナル