国の豪雪対応「机上の空論」 2年前の除雪費いまだ認定されず
新潟県上越市全域に災害救助法が適用された2021年1月の豪雪で、国から財政支援を受けられる高齢者世帯などの屋根の雪下ろしなどの除雪費236世帯分が、2年たっても国から認められていない。国が個々の除雪作業の写真の添付を求めるなど必要性について厳しく判定するようになったためだ。中川幹太市長は「机上の空論で豪雪地のことを考えてもらっては困る」と国の対応を批判している。
災害救助法適用も…
高田の積雪が249cmに達した2021年1月の豪雪で、上越市は災害救助法の適用を受けた。同法が適用されると、一人暮らしの高齢者などの要援護世帯の除雪費用を国と県が2分の1ずつ負担する。市は3579世帯の屋根の雪下ろしや除雪を実施して費用を県に請求し、約2億7000万円の交付を受けた。ところが、県が国に費用の2分の1を請求すると、担当の内閣府から書類などの不備が指摘された。
住宅側面の除雪 必要性疑問視
国は個々の世帯について除雪作業を行っている写真を求めたほか、屋根ではなく住宅の側面に積もった雪を除去することについて、災害救助法の趣旨に沿っているかという観点で、必要性について疑問を呈した。
市全域に災害救助法が適用されたのは2012年以来。市によると、以前は写真の添付がなくても、民生委員などの確認印で認められていたという。市の担当者は、写真や家の側面の除雪の必要性などは「話題にもなっていなかった」と振り返る。
「救助に値する積雪量が確認できない」
国の指摘を受け市は、写真のない家については近隣の写真を添付したほか、積雪量のデータなどの追加資料を作成して、国に提出した。昨年11月に行われた国の監査では、県の担当者とともに市の担当者も同席し、あらためて除雪が必要だったことを説明したが、236世帯については認められず、さらに追加資料を求められた。
国は、一部の家については写真から救助法を適用するほどの積雪量が確認できないと指摘したほか、要援護者の住むアパートや市営住宅などについては、市や貸主が所有者であることから、救助法による費用負担に難色を示したという。
「スノーダンプって何?」
国は、除雪前と除雪中、除雪後の写真の添付を重視しているが、市の担当課は「豪雪災害の最中、除雪作業中に写真を撮ること自体が困難」と話す。また、国の担当者から「スノーダンプとは何か」と尋ねられたこともあったという。
法適用見送る苦肉の策も
昨年(2022年)2月、同市などが大雪に見舞われた際、県は災害救助法の適用を見送り、県災害救助条例を適用した。国が最終的に判定する救助法適用範囲が不明確なことによる苦肉の策とも言える。除雪費は県と市で負担した。
雪国全体の問題 国会議員と連携し取り組み
市はこれまでも国に対し雪国の現実に則した制度の運用を継続的に訴えてきた。その結果、昨年7月の災害救助事務取扱要領の改定では、住宅側面の雪の除雪や積雪が窓ガラスに密着して割れる恐れがあるケースは救助対象として例示されるなど、国も一定の理解を示してはいる。市の担当課は「当市だけの問題ではなく、雪国の自治体全体の問題。雪国の実態を粘り強く訴えていく」としている。
昨年12月の市議会でこの問題について問われた中川市長は国の対応を批判し、「国会議員とも連携して国に訴えていく決意だ」と話した。
記事参照元:上越タウンジャーナル