「水稲V溝乾田直播栽培」で労働時間や生産コスト削減も 上越市が普及拡大に向け実演見学会
新潟県上越市は稲作における生産コスト低減や高温対策に有効な「直播栽培」の普及拡大に向けた取り組みの実演見学会を2024年4月30日、板倉区で開いた。会場となったほ場では高速作業で大面積の播種(はしゅ)が可能な「水稲V溝乾田直播栽培」の実演が行われ、参加者たちは栽培様式などについて知識を深めた。
ICT(情報通信技術)などを活用し、作業の効率化や品質向上に向けた「スマート農業」を推進する「スマート農業推進事業」の一環として企画された。市内の認定農業者や関係者、計約100人が参加した。
直播栽培は春に乾田状態で直接ほ場へ播種作業を行う水稲栽培様式のこと。育苗や田植えを省略することができ、春の農繁期の大幅な省力化と軽労化が可能となる。V溝乾田直播は乾田に播種機で深さ5cmのV字形溝を作りながら種もみと肥料をまく方法で、溝へ播種することで風によって苗が飛ばされるなどの被害のほか、鳥害が少ないという。
上越農業普及指導センターによると、育苗と移植作業が不要となる春作業では通常の移植栽培に比べ労働時間で約2割、10a当たり、生産コストで約1割の削減効果が期待されるという。また移植栽培と組み合わせ、耕起整地や収穫作業の分散化、中間管理作業の省力化により、作業が平準化し、大規模化にも対応できるという。
見学会ではV溝直播機を2018年に導入した農事組合法人高野生産組合が実演。ほ場では、GPSによって自動操舵されたトラクターが直進をキープしながら田んぼを進み、播種される様子を参加者たちが見守った。乾田に作られた溝を見たり播種機に触れたりもしていた。
高野生産組合の閏間忠裕代表理事(68)によると本年度、組合では新たに直播機を1台増やし、作付面積70haの約半分を直播栽培で取り組む。「播種後の雑草対策は必要だが、毎年気温に左右されて気を使う春の苗作りを省略できる。労力を軽減しないと生産費を落とせない」とし、同市農政課の佐藤朋美課長は「導入は条件がそろう所となるが、参考にしてもらい検討してほしい」と話した。
記事参照元:上越タウンジャーナル