回顧2023年 上越タウンジャーナル記者トーク(2)

今年1年を振り返る記者トークの前日からの続きです。

通年観光計画

記者A 中川市政の2年目を振り返ってみたいが、多くは任期折り返しの特集記事に書いたのでそちらを見てもらいたい。それでも今年1年で特筆すべきは、やはり看板公約の通年観光計画だろう。

記者B 今年8月の最初の記事、業者選定をめぐる出来レース疑惑から始まり、20本近い記事を出した。

記者C 中川市長はすべてについて「不正はない」「適切だった」と強弁し続け、11月に計画の概要が明らかになると今度は議会で「観光都市を目指しているわけではない」と発言。質問した議員は絶句していた。そしてつい先日、業を煮やした市民が業者の選定が不公正だったとして委託料の支出差し止めを求めて住民監査請求を行った。

市民が監査請求を行った(2023年12月26日)

記者B 監査請求した市民は「対話集会で市長に直接言ったが、わたしたちの怒りが伝わっていないと思い監査請求した」と話していた。一市民がこうして直接行動を起こさなければならいということは、通年観光について市民のコンセンサスが得られていない証左でもあり、また市長に直接話したのに伝わらなかったとの話も重い。

高田地区の対話集会(2023年8月30日)

記者A 政治家が有権者から「話してもわからない」って言われたら終わりだよ。

取材のウラ話的トーク

記者B それはともかく、せっかくこういう機会なので、なぜ上越タウンジャーナル編集部が通年観光計画という問題に取り組んだのか、その辺のいわゆるウラ話的なことを紹介しよう。

記者C 市の観光セクションの方々に申し訳ないが、わたしはそもそも上越市がやる観光というものに興味がなかった。ただ、中川市長が通年観光を進めると言うので何をやりたいのか質問しても「わたしには考えがあるが、今それを言うと大勢が私が言った方向に向かってしまうので言えない」と答えるばかりで中身がわからなかった。6月になって通年観光計画策定支援業者選定のプロポーザル要項が発表されたが、それを見ても市長が何を求めているのか全くわからなかった。そこで、本年度新設された「魅力創造課」という不思議な名称の課に取材を申し入れた。ここがスタートだった。

記者A しかし、なぜか魅力創造課はすごく忙しかったようで、なかなか取材に応じてもらえず、結局、通年観光計画策定のプロポーザルの経緯について包括的に情報公開請求するしかなかった。

記者B 通常、任意の取材を経ずにいきなり、それも包括的に情報公開請求をするということは特殊なケースを除いてまずないのだが、取材に応じてもらえなかったので仕方なかったということだ。

記者C その後の対応は、すこぶるひどいものだった。選定された業者が前年度の市の内部の会議に出席していたのではないかという点について質問したところ、副課長は、答えるとも答えないとも回答しない。らちが明かないので、なぜ答えないのかと問いただしたところ「わたしの能力がないからである」と言い出す始末。そこまでして隠したいのかということと、こんなことを公然と言い放つ職員がわたしたちの住む上越市の公務員しかも管理職であることにあきれ、悲しい気持ちになった。能力がないと公言する管理職は当然降格させるべきだと思うし、上司にも伝えたがなんの対応もない。

記者A 魅力創造課のこうしたあきれた対応は市議会の本会議でも指摘された。これもかなり異例なことで驚いた。

記者C 市議会の一般質問は事前に担当する課が議員に質問の趣旨などの聞き取りをするが、9月定例会で一般質問に立った渡辺隆副議長は「聞き取りの際に担当課が『どこが問題なんですか』と開口一番言ってきた」と明らかにしてその態度や姿勢を疑問視した上で、業者選定の公平性にも疑問があると質問した。

記者A 渡辺副議長が指摘したのは、食って掛かるような物言いでかたくなに自らの正当性だけを主張してくる態度だ。いわば「謝ったら負け」というようなある種いびつな価値観が市役所の一部にまん延している感じがする。

記者B この部署の組織文化なのか担当者なのか、いずれにしても組織に問題があるということだ。

記者C 就任直後から人事改革プロジェクトを立ち上げて組織を整理して、本年度新設したいわば市長肝いりの「魅力創造課」なのにね。

記者A まあこんな経緯の中で、情報公開請求した文書が部分的に公開され、さらに取材を続けていく中で、どんどんいろいろなことが分かってきて、年末まで記事が続くことになった。

市長も市長なら議会も議会

記者A 7月の中川市長の私立高校をめぐる差別発言問題は、何度も触れているのでここではこれ以上言及しないが、今年一番市長が評判を落とし市民の信頼を失った原因の一つといえる。

記者C これに限らず市長の失言はひどいが、「市長も市長なら、議会も議会だ」という声も聞かれた。

市議会本会議中にショッピングサイトを物色する市議(2023年9月21日)

記者B 本会議中に貸与されたタブレットでネットショッピングや、委員会の無断欠席市民活動室での政治活動など不祥事や不適切な事案が相次いだ。

記者C 来年4月に改選があるが、本当によく考えて投票しなければならないね。

給食めぐり明暗 全国大会優勝とアレルギー事故

記者B 学校給食をめぐっては、妙高市と上越市で明暗が分かれた。

記者C 妙高市立新井中央小学校が今月、給食の献立や味を競う全国大会「第18回全国学校給食甲子園」で優勝した。妙高の冬の風物詩であるアスパラ菜の混ぜ込みご飯や、かんずりのソースをかけたメギスの米粉揚げ、酒かす入りの「ごっつぉ汁」など郷土色を出しつつ、子供に食べやすく工夫した素晴らしい献立だった。県勢では14年ぶりの快挙だった。

記者A 一方、上越市立小学校で9月に起きた給食アレルギー事故は、命に関わる重大事故だった。しかも問題は、一部にあったのではなく、調理から給食提供までの過程、事故発生時の学校での対応、事故後の教育委員会での情報共有すべてに問題があった。

記者B 事故後発生時の対応はこれまでの記事に詳しく書いてきた。ここで触れておきたいのは、なぜアレルギー原因物質が入った給食が提供されたのかという点だ。

記者B まず栄養教職員は事前に配合成分表を取り寄せていなかった。さらに給食当日には配合成分表がないため確認ができないにもかかわらず、チェックリストには委託先企業の調理員2人によるチェックが入っていた。いずれも見落としなどうっかりミスというより、やってはいけないことと知りながらやっている行為だ。いずれにせよ、外形的には業務上過失致傷罪の要件を満たしているようにすら見える。

記者B 教育委員会は来月、事故報告書をまとめて報告するとしているが、この辺の責任論がどのように処理されるのかにも注目したい。

記者C また、組織としての情報共有がずさんだったのには驚いた。

記者B 結局、学校が作った詳しい報告書は教育委員会の担当課長で止まっていた。わたしたちが最後の確認のために取材したことをきっかけに、初めて教育委員会のトップである教育長、ナンバー2の教育部長が報告書の存在を知ることになった。その翌日、上越タウンジャーナルと新潟日報が記事化したが、中川幹太市長と2人の副市長は記事を読んで初めて知るという事態だった。

記者会見する上越市教育委員会の教育部長ら(2023年10月30日)

記者B こうしたことに対して、中川市長も「情報共有に課題がある。解決しなければならない」として全庁的に改善を指示した。

記者A 教育委員会には、市役所に採用されたいわゆる事務方の職員と、学校現場から来た教員が机を並べて一緒に働いている。その文化の違いなどから、意思疎通などが必ずしもうまくいかないケースがこれまでの取材でも多く見られた。

記者C こうした組織の問題はなかなか難しいが、解決しないとまた同じ不幸な事態が繰り返されることになる。教育という分野なのでデリケートな部分もあるが、人事改革を掲げる中川市長にぜひ切り込んでもらいたい。

<つづく>

記事参照元:上越タウンジャーナル