回顧2023年 上越タウンジャーナル記者トーク(3)
今年1年を振り返る記者トークの前日からの続きです。
大貫4で殺人事件 近隣住民に不安広がる
記者A 6月1日には上越市内で殺人事件が発生し、現場周辺や警察署で取材した。
記者B 近隣住民は事件発生日の深夜に警察が聞き込みに来たことで事件を知った人も多かった。話を聞いた人の中には「警察がライトを照らして庭も見回っていた。もし犯人が隠れていたらと思ったらとても怖い」とおびえた様子で話す人もいた。
記者C 市内一部の小中学校が臨時休校になった。近隣住民はとても不安だったと思う。
記者B 発生から容疑者逮捕まで約1か月半あり、長期に張られた規制線内の住民にいたっては、自宅の行き帰りでも現場警戒する警察官に身分証を提示していた。ある住民は「ちょっとコンビニに行くだけでも警察に免許証など見せなければいけないので、気を使う」と言っていた。警察から日々の安全も守られていたが、大変だったと思う。「早く日常に戻りたい」と訴える人もいたね。
記者A 7月11日夕方、被害者の知人で長野県上田市の男性が殺人容疑で逮捕された。その日の夜に捜査本部の会見が行われ、ひとまず区切りがついた。
特殊詐欺被害が多発 「受け子」で中学生逮捕も
記者A 特殊詐欺被害で大金をだまし取られたり、詐欺に加担した犯人が逮捕されたりした事件が多かった。上越警察署管内では11月末現在、23件約9589万円の被害があり、県内29警察署のうち、被害件数、被害額とも最多を記録した。
記者C 中でも60代女性が合計6000万円をだまし取られた事件はとても切なかったね。届いたうそのメールに自ら連絡したことから始まり、犯人と連絡が取れなくなるまでの約2か月間に、女性は80回にわたって現金を振り込んでしまった。
記者B 詐欺被害は高齢者がターゲットになると思われがちだけれど、動画未納料金の名目で30代が288万円の被害にも遭った。今はいろいろな手口で誰もがターゲットになり得る。
記者A 詐欺グループに加担した女子中学生が上越市の80代から700万円をだまし取った「受け子」で逮捕されたのは衝撃だった。
記者C 今はコンビニ店員や金融機関職員の声掛けで詐欺を未然に防ぐケースもある。店員たちの洞察力は目を見張るものがあるよ。
記者B 上越警察署によると、コンビニ店員が20代女性の詐欺被害を未然に防いだケースがあった。若者が1万円の電子マネーカードを購入するなんて日常的な光景だと思うが、店員が感じ取ったほんの少しの違和感で、被害を食い止めたそうだ。
記者A 今年から警察官がコンビニを受け持って巡回する取り組みも始まっていて、詐欺被害の歯止めに効果を見せているようだ。
カフェのオープン続々
記者A 今年は大型連休後に新型コロナウイルスが5類に移行した。飲食店は新型コロナで大打撃を受けたが、新たな動きはあっただろうか。
記者B カフェのオープンが目立った印象だ。「THE BEACH BUM(ザ ビーチバム)」「ふんわりカフェ」「読書喫茶ヒミツヤサン」「CASUAL DAYS(カジュアルデイズ)」「イマココ」「ひまわりこおり」など、立地やメニュー、コンセプトにそれぞれ個性がある。高田地区の雁木通りの町家を改修した店も多く、カフェではないがベーグル専門店「HÖBARÜ(ホオバル)」は開店当初は行列になっていた。チェーン店でも「高倉町珈琲」が出店した。カフェはInstagramに写真を投稿する若者も多いし、リピーター率も高い。
記者C クラフトビール醸造所も増えた。昨年末にオープンした「テラ」に続き、今年、「OTAMA BREWING(オタマブルーイング)」「Gangi Brewing(ガンギブリューイング)」が相次いでオープンした。これで上越市内のクラフトビール醸造所は3か所。来年はクラフトビール祭りなどをやってほしい。
空き家ホテルやトレーラーハウスも
記者B さまざまなタイプのホテルや宿泊施設もできた。上越市中郷区には点在する空き家をリノベーションして一棟貸しし、地域一帯を宿泊施設に見立てた分散型ホテル「町宿Oranchi(オランチ)」、妙高市雪森には宿泊施設併設の“泊まれるすし店”「蔵人」、池の平温泉のアルペンブリックリゾート内にはトレーラーハウス型の宿泊棟「アルペンブリックハネウマビレッジ808」が完成した。
道の駅あらい東側エリアの隣接地には来年4月、全9棟にプライベートサウナを完備したロードサイドホテル「HOTEL SOBOKU(ソボク)」がオープンする。コロナ禍の影響か、あまりほかの宿泊客と顔を合わせないプライベート感を重視している点が共通している。
スーパー「ウオロク」上越地域初出店
記者C 10月には新潟市などを中心に下越・中越地域をエリアとしていた食品スーパーの「ウオロク上越店」が上越市土橋の上越大通り沿いにオープンした。上越地域は初出店だ。ウオロクのオープンにより編集部で話題になったのが電子マネー「CoGCa(コジカ)」の使い方。地元スーパーの「イチコ」でもCoGCaが使えることから「カードは併用できるのか」とか「ポイントはどうなる」など、記事そっちのけで議論になった(笑)。
記者B 結局、チャージや利用は二つのスーパーで相互に可能だが、ポイントはそのスーパーが発行したCoGCaカードのみ付与される仕組みだった。ポイント制度は店によって違うので、CoGCaカードはイチコ、ウオロクと2枚使いしているが、それだと電子マネーなのにチャージが分散してしまう。決済システムだけでなく、ポイント制度も共通にしてほしいというのが物価高にあえぐ消費者の切なる願い。
記者A 閉店した店はどうか。
記者B 妙高市にあった2店、「ミシュランガイド2020特別版」でミシュランプレートに選ばれたウナギ、ドジョウ料理の専門店「可祢万(かねまん)」と老舗ラーメン店「杉村屋」の閉店は残念。どちらも“いぶし銀”のような店だった。店主の高齢化や後継者がいないなどで、来年も長年地域に親しまれた店の閉店は続くだろう。
生成AIの衝撃
記者B 最後に、今年は生成AI(人工知能)の普及がものすごい勢いで進んだ1年だった。編集部でも取材活動やデータ分析などに幅広く本格的に使い始めた年となった。
記者A 録音からの文字起こしは、少し前から完全にAIのお世話になっている。おかげで昔のように一言一句メモを取らなくなった。
記者B また政治資金収支報告書の計算が合っているか検証する作業をやらせてみたが、素晴らしい出来だった。
記者A さらにAIに特定の知識を与えてカスタマイズすることも比較的簡単にできるようになったので、中川市長が就任してからの記者会見の全記録、経歴のデータ、話し方の癖などを「知識」や「設定」として与えた独自のAI「中川上越市長AI」を作ってみた。
記者C 正直思った以上の完成度で、中川市長本人みたいに答えるので面白い。しかし、実在する人間の人格を模したAIというのは倫理的問題をはらんでいるということを実感した。従ってあくまで実験的な試みではあった。
記者B 「中川上越市長AI」を作るためには、上越市のホームページで公開されている記者会見の記録すべてを収集する作業が必要となる。従来なら手作業でやるか自分でちょっとしたコードを書かねばならなかったが、こうした作業もAIに指示するだけであっという間にやってくれる。ほんと便利だ。
記者C データ分析のためのデータ整形などは以前とは比べものにならないくらい簡単にできるようになった。
記者A さらに調子に乗って「通年観光計画AI」というのも作ってみた。上越市の通年観光について取材で収集したたくさんの資料、議会の議事録などを知識として与えた。試しに議員の一般質問に対する答えを書かせてみたら、かなりの出来でちょっと直せばそのまま答弁書になりそうなレベルだった。
記者B しかし、実際に使い始めてみて違和感もある。生成AIの学習に、いわゆるパブリックドメインで公開されているデータなどを使用するのはいいと思うが、わたしたちが苦労して書いた唯一無二の記事を勝手に収集して学習材料にされるというのはどうも納得が行かない。まあ、各国で同様の議論があるようなので、権利が守られるようなルールが作られてほしいと思う。
記者C また上越市も今年から生成AIを業務に試験導入して検証を行っている最中だという。これまでの使用方法はまだ序の口で、来年はもっともっと活用は多様に進むと思う。どんな未来になるのだろう。
<おわり>
記事参照元:上越タウンジャーナル