Closerの樋口翔太さん(上越市出身) 筑波大発でベンチャー創業 AIロボ 食品業界の課題解決

人間と協働で段ボールなどの積み付け作業を行う「Palletizy(パレタイジー)」と樋口さん(茨城県つくば市の筑波大産学リエゾン共同研究センター)

人口減少と高齢化率の上昇に伴い、特に食品製造業界の人手不足が深刻化している。そんな社会課題を解決しようと、筑波大発のAIロボティクスベンチャーを立ち上げた樋口翔太さん(26、上越市出身)。2021年の設立から2年余り。現状と展望を聞いた。

筑波大(茨城県つくば市)の産学リエゾン共同研究棟の1室にあるオフィス。2種類の産業用ロボットが置かれている。1台は30キロまでの重さの段ボールを持ち上げパレットに積む協働ロボット「Palletizy(パレタイジー)」、もう1台はコンビニエンスストアやスーパーマーケットでよく目にする食品容器に、調味料や香辛料をつかんで入れる「PickPacker(ピックパッカー)」だ。

いずれもプログラムは自社製。ピックパッカーには複数種類ある小袋を画像で認識し、正確に選んで入れるための人工知能(AI)センサーが搭載されている。

食品産業はサイズの異なる商品が複数ある、少量多品目を扱うことなどから、製造ラインの自動化が難しい業種といわれる。樋口氏は「これまでロボットを導入できなかった企業に向け、コンパクトで使いやすいものを提案していきたい」と話している。

◇コスト競争力に強み

―自社の強みは。

食品工場の工程で出てくる、不定形なものもロボットが認識できること。ソフトウエアを内製しているので、コスト競争力がある。ロボットはモジュール化・パッケージ化しているため比較的簡単に導入できる。

―製品はスペースパフォーマンスに優れているように見える。

ピックパッカーは柵の形が特徴的。下部を開放することで、コンベヤーをロボットに埋め込むことができ、省スペースで設置できる。特許を出願した。パレタイジーは人との協働ロボット。大がかりな柵を設けることなく運用が可能だ。

―ロボットの製造・組立工場を設ける考えは。

今夏には(現在のオフィスの)6倍のスペースが必要になると見込んでいる。25年には月産4台ペースの生産を目指している。スペース確保は事業の成長とともに必要になる。

―自社に必要な人的資源は。

ピンポイントで求めている人材は、ロボットの操作画面開発や生産技術、設計分野。開発や営業、財務・事務はパートタイム労働者に頼っている。私とエンジニア、広報担当の3人のみがフルタイム。仕事の効率やコミュニケーションを考えるとフルタイムを増やしたい。昨年3月に投資家から資金を調達、12月には農林水産省の「中小企業イノベーション創出推進事業」で1億8000万円(限度額、4年間)の採択を受けた。手元資金を活用し採用に努めたい。

◇売上高10億円目指す

―5年後のありたい姿は。

売上高10億円を達成したい。ソフトウエア開発を強化したい。見た目は同じでも、さまざまな対応ができる製品を市場に提供していきたい。「Closer(クローサー)」は、より近く、という意味の英語。「ロボットを身近に」「工場を自動化したいと思ったら、自動化できるように」その選択肢を提供したい。

「まずは売上高10億円を目指す」と話す樋口さん

記事参照元:上越タイムス電子版