[新潟上越市長・高卒者蔑視発言]上越市議会に広がる中川幹太市長への怒りと失望 問責決議案は否決されたが、反対議員も「次はない」

信越化学工業の工場で働く高校卒業者に対し、差別ととられかねない発言のした上越市の中川幹太市長。市役所で報道陣の取材を受け、釈明した=2024年6月19日、上越市役所

新潟県上越市議会6月定例会の一般質問は6月19日までの計4日間行われ、中川幹太市長の政治家としての資質や、市政運営の在り方を問う質問が相次いだ。2024年4月の市議選後初となる論戦で、市長と市議会との溝の深さが改めて露呈。工場で働く高校卒業者への差別ともとられかねない市長の発言もあり、議場には怒りと失望感が広がった。ただ、問題発言を受けて提出された問責決議案は否決され、市長と対峙(たいじ)する市議会の微妙な温度差も垣間見えた。

「6割以上の人が私の市政を認めていない。真摯(しんし)に受け止めたい」。6月14日の一般質問で市長は淡々と述べた。

答弁の内容は、新潟日報社が市議選の際に実施した候補者計39人へのアンケート結果について。市長の市政運営について64%が「評価しない」「あまり評価しない」と否定的な見解を示していた。

アンケート結果を基に市長に見解を尋ねた保守系の最大会派「久比岐野」の橋本洋一代表は「市民の考えのある程度の傾向を示しているのでは」と分析。市長の発信力を疑問視し「物足りなさがあり評価が上がらないと思う」と指摘した。

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中川市長は市議会改選前から、議会内で自らを支えてくれる勢力づくりができないでいる。公約に掲げた「副市長4人制」は否決され再提案を見送ったまま。度重なる失言に批判の声は絶えない。改選後初の一般質問でも、市長の政治家としての資質に関する指摘が相次ぎ、信頼関係の構築に向けた道のりの険しさが表面化した。

「しがらみのない市政」を掲げる市長は、市議選で特定の候補を応援しなかった。近藤彰治副議長(市民クラブ)は、市議選における市長の対応について「自らの政策実現へ応援してくれる議員をつくるため、市議選は絶好の機会だった。市長を評価する人を選挙で応援すれば少しは市長選が楽になるのでは」と問うた。

それに対して市長は「選挙にはさまざまなやり方がある」とした上で「市議との関係の中で選挙をやるのは差し控えたい」と、次期市長選出馬を想定しているかのような考えを示し、市議からの支援を拒むようなニュアンスを強調した。

2021年の市長選で中川氏を応援し、8年ぶりに市議に復帰した本城文夫氏は市長に対し「就任以来の活動を見て大変憂慮している」と厳しい評価を下した。

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失言癖も指摘される市長は一般質問3日目の18日、問題発言をして市議会からの信頼も損ねた。

市長は企業誘致に関する答弁の中で、市内に工場を構える信越化学工業を名指しし「工場では高校卒業程度のレベルの人が働いている。企業誘致で頭のいい人だけが来るわけではない」と発言。議場が騒然となり「とんでもない発言だ」などと批判が噴出。暫時休憩を挟んで謝罪に追い込まれた。

市政運営を巡り、市長批判を繰り返してきた元市長の宮越馨氏(無所属)は、今回の発言に関して市長の政治的責任を問う問責決議案を提出。異例の事態となった。

しかし、決議案は「久比岐野」「みらい」「つなぐ」「公明党」の各派が賛同せず、議長を除く31人中13人の賛成少数で否決された。対市長で市議会も一枚岩ではない現状が明らかとなった。

賛成した革新系のベテランは「失言に対して議会が抗議の立場を鮮明にすべきだった。発言を容認したととられかねない」と話す。一方、反対した保守系会派の代表は「問責に当たるとも考えたが、市長が反省し議場で謝罪したので見送った」と説明する。

ただ、市長を擁護する声は聞こえてこない。ある中堅市議は強調する。「今回は決議案には賛成しなかったが、2度目はない」

記事参照元:新潟日報デジタルプラス