10月14日は鉄道の日 上越には鉄道のお宝がいっぱい!

直江津は新潟県鉄道発祥の地

 10月14日は「鉄道の日」。日本で最初の鉄道が1872年の同日、新橋ー横浜間で開通したことを記念し、定められました。上越地域では1886年8月15、信越本線関山-直江津間が県内で初めて開業。135年を経た今も、地域では生活と共にある鉄路への愛着を、守り育んでいます。

地域の鉄道会社として誕生

 2015(平成27)年、地域の鉄道会社として誕生した〈えちごトキめき鉄道〉。上越市、糸魚川市、妙高市の管内で総延長98・3キロを運営しています。
開業2年目に運行を開始した「えちごトキめきリゾート雪月花」は、全国的に有名な観光列車へと成長。イベント車両として夜間から早朝まで沿線を往復する「親子夜行列車体験号」や、今年度は国鉄型車両を使う「観光急行」をはじめるなど、常に注目を集めています。

国鉄型車両の「観光急行」車両

「デゴイチ」を導入

 去年11月、圧縮空気で動く蒸気機関車のD51(通称デゴイチ)を導入。今年4月、直江津駅に隣接する直江津運転センターに〈直江津D51レールパーク〉を開園しました。
目玉はD51の乗車体験。貨物列車の車掌車だった緩急車2両を連結し、定員制で乗車可能です。1日4回、直江津駅自由通路付近までの構内約250メートル間を往復します。走行する様子はホームや自由通路から見ることができます。転車台に乗ったD51の旋回は間近で見られ、特に小さな子ども連れの家族に喜ばれています。

 直江津駅から回送列車に乗り、レールパークに直行できる「回送電車乗車体験」も、地域の鉄道会社ならではの独自サービスです。
7月に始めた国鉄急行形電車455系・413系の「観光急行」は、毎週土・日・祝を基本に運行。景色のよい場所で速度を落とす、「急いで行かない列車」がコンセプトです。昭和の雰囲気漂うレトロな車両の座席に座り、車内販売される軽食を求め、車窓の眺めを楽しむ、という趣向が受け、SNSを通じて全国に発信されています。

沿線を走行する観光急行の様子

「体験の思い出を後世へ」

 昭和の時代を彩った鉄道車両で地域を盛りあげる取組みは、まさに“温故知新”。〈トキ鉄〉の鳥塚亮社長は、高級志向の「雪月花」や地元向けのレールパークなど、ターゲットの異なるラインナップを「総合百貨店」に例え、「トータルで楽しめる機会をつくることで、深みがさらに広がる。他地域との差別化もできる」と話します。
鉄道の魅力に触れ、感動した自らの幼少期を振り返り、「D51は地域の方のためにある」と強調。「単なる移動手段だけではない鉄道を楽しみ、体験した思い出をつないでほしい」と呼びかけます。会社としても将来を見据え、「地域の足としての使命はもちろん、観光のシンボルとして、全国や海外からお客様を呼ぶお手伝いをしたい」と意気込んでいます。

観光急行の乗客たち
転車台上のD51

地域の宝、軽便鉄道

 1914(大正3)年から1971(昭和46)年までの57年間、現在の信越線黒井駅付近にあった新黒井駅から浦川原駅までの15㎞の区間を走った〈頸城鉄道〉。
当時、他に交通機関がなかった頸城地域には沿線住民の足として重要な役割を果たしていましたが、戦後の車社会の到来、それにともなう赤字化によって、昭和46年5月1日に路線廃止になりました。
百間町駅跡にある〈くびき野レールパーク〉(2008年10月オープン)は、〈NPO法人くびきのお宝のこす会〉(西山義則会長)によって、旧車両庫や復元した車両など、頸城鉄道時代に活躍した面影をそのままに大切に保存、管理されています。

〈くびき野レールパーク〉内に展示されている気動車ホジ3と無蓋貨車ト5車両

 同会員は、地域の人々を中心に、現在200名が登録し、イベント運営や車両の管理、パークの維持・修繕を行っています。2005年に蒸気機関車2号(コッペル社)の公開を始め、以後定期的に行われている公開イベントは、上越地域はもとより、県内外から鉄道愛好家が集まる人気のイベントとして定着しました。

会員やボランティアによる枕木交換作業

 廃線後は車両の行方がほとんど分かりませんでした。しかし、ディーゼル機関車「DC92」や気動車「ホジ3」、客車「ハ6」が、兵庫県の六甲山中で人知れず保存されているという情報がもたらされ、2004(平成16)年に個人所有だった貴重な車両が無償で返還。33年ぶりの里帰りが実現しました。

鉄道ファンが集う乗車体験

地域の宝を残すために

 来場者が、安全な乗車体験ができるように、会員が力を合わせて枕木の交換工事や保守点検作業が行われています。西山会長は、「会員をはじめ、県内外からのボランティアに支えられている。上越の持つかけがえのない宝として、地域の方々からの支援をお願いしたい」と話してくれました。

■東日本鉄道OB会直江津支部

D51-75の動態活用を目指して

 「鉄道には不可思議な魅力があり、鉄道が寂れると街が寂れていく」。こう話すのは、戦後間もなく設立された歴史と伝統がある〈東日本鉄道OB会直江津支部〉支部長の牛木幸一さん。会員互助と鉄道を使った町おこし、無人駅の清掃、〈五智交通公園〉内に静態保存されているD51ー75の清掃や維持活動、鉄道資料の展示会、講演などを通じた地域貢献活動を行っています。毎年、支部会員とボランティアによる清掃活動を行っているD51ー75は、全部で1115両建造されたうちの75番目に造られた初期型タイプで、現存する機関車の中でも貴重なものです。1972(昭和47)年まで直江津から山形県酒田間の日本海縦貫線で活躍し、同年から同所に保存されています。
今年8月に行われた清掃活動には、会員の他に小学生や保護者、鉄道愛好家らが参加し、高圧洗浄による水洗い、車輪や部品の隅々まで拭き取り作業を行い、参加者全員で心地よい汗を流しました。参加した鉄道キッズには、特別に煙筒内部や運転席の見学も許可され、笑顔に満ちた表情が印象的でした。

D51-75清掃の様子
D51-75清掃の様子
特別公開された煙筒内部で記念撮影!

貴重な鉄道資料は地域の宝

 新潟県鉄道開業135年を記念して、OB会が所蔵する貴重な鉄道資料が開業記念日の8月15日に合わせて行われました。牛木支部長は、「8月15日は終戦と鉄道の2つの意味で近代がスタートした日。県内鉄道発祥の地というネームバリュー、D51や鉄道資料は、観光、地域おこしの起爆剤になる。“鉄道特区”の指定など、まだまだ可能性は大きい」と話します。

直江津支部が所蔵する貴重な資料の数々
鉄道部品展は多くの来場者で賑わいました

 鉄道資料の一部は、直江津学びの交流館で常設展示されていて、10月には展示品のリニューアルも予定されています。

記事参照元:タイムスLite

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