じょうえつレポート 会期58日 試みと成果 上越市直江津一大イベント「なおえつ うみまちアート」 見慣れた街に新境地

「なおえつ うみまちアート」が9月26日に閉幕した。上越市直江津地区の4会場に現代アートの作品を展示した今夏の一大イベントについて振り返る。(報道部・梅田邦彦記者)

商店街や学校市民団体など徐々に活動連動

 同イベントは上越市と「無印良品 直江津」を運営する良品計画(東京)、頸城自動車(同市)が締結した「地域活性化に向けた包括連携に関する協定」に基づき、今年初めて企画、実施された。7月31日の市民向け前日祭を含め会期は58日間。会場は船見公園、ライオン像のある館、安国寺通りの空き店舗、直江津屋台会館。街中の周遊を促し、地域に親しみ、地域活性化につなげるのが狙い。

 出展作家は中央で活躍する8組で、事前に直江津を訪れ、その印象を基に直江津の特徴を取り込んだ作品を制作した。一般になじみが薄いと考えられた現代アートだが、「海岸に設置して夕日などとともに楽しむ」「廃校の学用品を組み合わせて制作」「市民にシャツを着てもらい、後に回収して作品作り」など地元にゆかりがあり、分かりやすい内容の作品が多かった。

 これまでに直江津を訪れたことのなかった作家たちは、「消雪パイプの水で茶色くなった道路や壁」など、地元の住民には見慣れた風景にアートを見いだした。その視点は少しずつ広がり、「(見るものが)何でもアートに見えてきた」と話すまち歩きツアー参加者もいた。船見公園の海岸には日没時に多くの人が訪れ、見慣れているはずの夕日を眺めたり写真を撮ったりしていた。

うみまちアートの安国寺通り特設会場の様子

 実行委員会はうみまちアートの会期中、市民らが相乗りのイベントを行うことを期待していた。準備期間が短いことや、様子見などで8月中は少なかったが、9月に入り関わる人が増えた。地元の市民団体や小中学校、商店街が作品展やまち歩きツアー、スタンプラリーなどそれぞれの立場からイベントを実施。同市企画政策課は「最初は『何をやるんだ』という感じだった。会期が長いことが良かった」と振り返る。

 会期を通じて直江津の街に普段より多くの人が歩いていると感じた。これは同イベント関係者からも同じ意見が多かった。上越市立水族博物館「うみがたり」、「無印良品 直江津」、三・八の市など集客力がある施設が、会場近くにあったことも相乗効果を生んだ。

 イベント最終日のクロージングでは来年以降の継続を望む声が多かった。今回ほどの予算規模の実施は現実的ではないが、美術展覧会にはビエンナーレやトリエンナーレなど2年に1度、3年に1度定期的に開かれているものも少なくない。今月22日に開かれる実行委員会でイベントの総括や今後についてなどが話し合われる。同イベントのキュレーター(学芸員)、鈴木潤子さんは「直江津の皆さんが今後どうするのかに期待している」と会期終了後に話した。

記事参照元:タイムスLite

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