[高田を継ぐ・インタビュー]住居、民泊、保育の場…空き家活用はアイデア次第 ジェクトワンシニアマネージャー・印南俊祐氏
新潟県上越市高田地区をはじめ中心市街地で最も大きな問題となっているのが、人口減少に伴う空き家の増加だ。不動産業「ジェクトワン」(東京都渋谷区)は全国各地の空き家を借りて改装し、利用者に転貸する新たなビジネスモデル「アキサポ」を展開。新潟県内では三条市と協定を結び、空き家対策に取り組んでいる。同社地域コミュニティ事業部の印南俊祐シニアマネージャー(45)に、高田再生のカギを握る空き家活用について聞いた。(上越支社・川島薫)
-取材をした上越市高田地区では空き家問題に苦慮しています。
「高田は空き家の目立つ雁木(がんぎ)通りと駅が近く、基本的には便利な立地だ。町家は現代の住宅と違って細長い間取りだが、家の正面も裏手も道路に面している家も多く、そういう土地は改装の幅が広がる」
-どう活用していけばよいのでしょうか。
「単なる住宅とするのではなく、さまざまな用途を想定した付加価値の高い施設にするべきだ。奥の間や2階はシェアハウスなどの住居や民泊にすると同時に、道路に面した土間側の広いスペースは貸し出すなどの方法もある。施設には特定の人が常にいるということも大切だ」
「家は一つでなくてもいい。趣味の作業場にしたり、お母さん同士で家を借りてお互いに子どもの面倒を見合う保育の場にしたり、建物の使い方はアイデア次第だ。農水産物が豊かな上越では、加工・販売施設としても活用できるのではないか」
-コスト高など改装の課題も指摘されています。
「空き家問題はオーナーや地域だけでなく、行政と一緒になって取り組む必要がある。行政も空き家問題に関心が高く、補助金も用意しているが、耐震改修の制限などで活用のハードルが高い場合も多い」
「行政は、条例や支援策、市営シェアハウスなど空き家を活用した施設を造るだけでは不十分だ。支援策があるということを積極的にPRし続けなければならない。シェアハウスなども住人が入ってよしとするのではなく、地域との交流を促すなど継続的な取り組みが求められている」
-空き家対策は今後どのように取り組むべきでしょうか。
「空き家問題は耐震基準など国の法令や各自治体の都市計画、ユーザーの生活スタイルの変化などが複合的に絡んでいる。空き家の増加を完全に抑えることは難しいが、せめて上昇率を緩やかなままキープしたい」
「首都圏ではニュータウンやタワーマンションが乱立し、できてはすぐに廃れていく。新築志向に寄りすぎた人々の意識をどう変えるかも重要だ。いまはニッチな市場がはやる傾向もある。地域やそこにある建物を『いい』と思ってもらえる層にダイレクトに訴求していくことも有効だろう」
◎印南俊祐(いんなみ・しゅんすけ)1977年栃木県生まれ。東京都渋谷区の工務店で現場監督を務めた後、住友不動産のリフォーム部門で200棟以上の物件を手がけた。2020年1月ジェクトワン入社。当初からアキサポ事業に携わり同年10月から現職。
記事参照元:新潟日報デジタルプラス