【土建業が農業に進出】収穫量は年間2万6,000俵 土木・運送事業などを展開する田中産業(新潟県上越市)が上越市トップレベル規模の稲作に注力

田植えの様子

同社が農業に参入するきっかけとなったのは、約30年前。ある社員が上越市内の実家で兼業農家だったが、親の離農で農地の処分に困っていると相談されたこと。田中康生取締役社長(当時・常務)は個人での取得を決めたが、「当時はバブル景気で、建設業関係者の農地取得は転用を警戒されて、ご理解いただくのに一苦労でした。農作業で日焼けした顔を見て、上越市農業委員会の皆さんから納得していただきました」と振り返る。

そして、田中社長は農地面積が拡大した経緯と理由をこう語る。

「最初は1町1反の面積で、手作業でやっていたのだが、作業の様子が楽しそうに見えたようで、近くの人から『田中さん買ってくれませんか』と言われて、農地が増えていった。始めてからしばらくは1回の売買が3haほどで、最初の20年で約50ha程度だったが、昨今、農事組合法人の担い手が高齢になって、ここ10年は20haといった集落単位での購入依頼が増えた。その結果300haを超えるまでになった」。

8台同時に刈る様子

稲穂を持っての記念写真

また、大規模農業では欠かせない省力化についても言及した。

「いかに安全で美味しいお米を作ろうということで、100haを超えた時に、月1回10kgを社員に配ることにして、農業担当者のモチベーションを高めた。なおかつ、省力化をしようと試行錯誤しており、人工衛星を使った監視システムや自動運転トラクターの導入など、スマート農業に取り組んでいる。3代目の朗之常務取締役がアメリカのキャタピラー社でICT技術を学んできており、そのノウハウをスマート農業にも生かしている」。

このように最新鋭のICT技術を駆使し、大規模農業を行なっている田中産業だが、今後の目標について田中社長は、「うちの畔は総延長200kmほど。単純に距離で言うと、上越から山形県境くらいまであるすごい距離だ。できるだけ除草剤を使わない方針のため、この距離を除草するだけでも大変なので、今は意図的に圃場面積を増やさないでいる。草刈りの自動化など畔の除草に関する情報収集をしているところだ。この除草と人員がクリアできれば、将来的な目標として500haを目指したいと思っている」と語った。

同社の稲作の専任は4人、稲刈り時期は社員総出で行い、シーズンになると、毎日30haを刈っていくという。生産量は日本国内で約600万トン、新潟県内で約70万トン、上越市内で約7万トンと言われる。同社は上越市の中で数%であるが、収穫量は308haで約1,600トン。単純計算で売り上げは約3億円となる。

最後に田中社長は、「農業はどうしても暗く、辛いイメージがあり、お米では儲からないと言われている。弊社が農業をできるのは、土木、運送との部門間の連携・協力ができるからであり、農業単体では難しいと思う。一方で農業は作る喜びや自分が手を掛けた分だけ美味しくなるという喜びがある。うちは楽しく農業をやるようにしている」と話していた。

日本穀物検定協会が今年3月に発表した上越地区産(上越市と妙高市、糸魚川市)のコシヒカリが全国の食味ランキングで、10年連続で最高評価の「特A」を獲得したが、県や市、JAをあげた「上越産コシヒカリ」のブランド化への取り組みが求められるといえよう。

コンバインで刈りながら、隣の無人自動運転トラクターを操作している

 

(文 梅川康輝)

田中産業ホームページ

記事参照元:にいがた経済

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

sixteen + twelve =