新潟上越市吉川区の給水栓の鉄製ふた520枚盗まれる 「根こそぎとは…」農家ら憤り、警察に巡回強化を要請

新潟県上越市吉川区で、田んぼに水を流す農業用パイプラインの給水栓に設置してある鉄製のふたが盗まれる被害が相次いでいる。地元の土地改良区によると、雪が解け始めた2月ごろから農作業の準備が始まる3月下旬ごろにかけて、平場の5地区で計約520枚がなくなっていたことが判明。農家らは「根こそぎ盗まれるなんてこれまでないこと。ひどすぎる」と憤る。土改は警察に巡回の強化を要請し、注意を喚起している。

吉川区の30地区を管轄する吉川土改によると、給水栓のふたがある6地区のうち、大乗寺と竹直の2地区の約200カ所で約400枚が盗まれた。ふたは1枚縦約30センチ、横約60センチで重さ約5キロ。2枚一組で設置されており、被害総額は約200万円に上るという。

竹直地区で約75万平方メートルの水田を耕作する農事組合法人「竹直生産組合」では、給水栓がある約320カ所のうち、約150カ所で約300枚が盗まれた。「まさかここまでごっそりと盗まれるとは思わなかった。悪質だ」と髙野幸夫代表理事(62)は怒りをあらわにする。

2023年10月下旬ごろ、組合の職員が市道沿いにある給水栓のふたがないことに気付いた。「(耕作地の半分以上を占める)農道沿いの水田は大丈夫だろう」と思っていたが、雪が解け始めた2月ごろ、水田を見回るとふたの多くがなくなっていた。残っていた約150枚は盗難を防ぐため回収した。

ふたは塩化ビニール製の給水栓が紫外線で劣化したり、雪の重みで壊れたりしないよう保護する役割がある。髙野さんは「農作業の合間を見て合板でふたを作るしかない」と説明する。

ふたが盗まれた給水栓の上に、合板で手作りした板をかぶせる髙野幸夫さん=上越市吉川区

大潟区と頚城区、吉川区の一部を管内とする大潟あさひ土改(大潟区)でも、吉川区の山方、田尻、梶の3地区が被害に遭った。管内は給水栓にふたがない場所も多いが、ふたがある3地区の約60カ所で約120枚が盗まれた。集落から離れた場所に被害が集中。3月上旬、地元農家が水田を見回った際、被害に気付いた。

大潟あさひ土改の山岸正和事務局長(45)は「これまでふたが盗まれることはあったが、これほど大規模な盗難は記憶にない」と話す。「雪が降る前か、解け始めのころに盗まれたのではないか」とみる。

ほかにパイプラインの水を制御する制水弁を覆う鉄製のふたも10枚ほどなくなったという。

吉川区以外の地域では、大規模な盗難は発生していない。

吉川、大潟あさひの両土改は地元の駐在所に巡回強化を要請し、見回りに努めている。

記事参照元:新潟日報デジタルプラス