回顧2024年 上越タウンジャーナル記者トーク(2)
今年1年を振り返る記者トークの前日からの続きです。
政治 上越市議選に総選挙
記者A 今年は4月に上越市議選、10月には衆院選があり、選挙の年だった。
記者B 上越市議選では定数32に対して、現職22人、元職2人、新人15人の39人が立候補した。結果は新人が11人当選して市議会は少し若返った。
記者C 選挙戦で、多くの新人議員は「SNSなどで活動を発信します」と訴えていたが、当選後、この約束をしっかり守っている議員があまりに少なすぎる。例えば、中川幹太市長への不信案についてどう考えて行動したのか、最近の医療センター病院問題についての考え方などもきちんと表明すべきだが、こうしたことについて選挙で約束した通りに発信している議員はごくわずかだ。
記者B 小さなことかもしれないが、こうしたことから政治不信が生まれる。こんな簡単なことが守れないようでは次はないと思ったほうがいい。
記者A 年末になって医療センター病院の改築延期が問題になった。市議会の厚生常任委員会が議論の場となり、その様子はYouTubeで見ることができる。病院関係者に取材した際、複数の議員がこの問題について全く質問しないことに対して「ただ座っているだけであきれた。何のために議員になったのか」と皆かなり怒っていた。
記者C 今回の市議選では、街宣車や印刷物などに金をかけず、ネット中心の活動で挑戦した候補がいたが、上越市では新しい出来事だった。
記者B この候補は、政治は政治の専門家のものではなく、地域で働いている普通の人が議員になって問題に向き合って行くべきだという強い信念を持って立候補した。表明が遅く、出遅れが響いて落選したが、今後はこのような手法でやりようによっては当選できる感じがした。
記者A 落選はしたがこの人は、自らの考えなどをかなり発信しているので、新人議員は見習ってもいいと思う。
記者B 10月の総選挙は与野党一騎打だった。立憲民主前職の梅谷守氏(50)が自民前職で5期務めた高鳥修一氏(64)を破り、2度目の当選を果たした。
記者C 梅谷氏は日本酒問題、高鳥氏は収支報告書不記載問題があり、ともに逆風だったが、逆風は「裏金」と言われた高鳥氏のほうが強く、日本酒問題の逆風はそこまで強くなかったようだ。党から処分を受けた高鳥氏は、比例重複立候補も認められなかった。
記者A 梅谷氏は今年2月、選挙区内で日本酒を配っていた問題を報じられ、刑事告発を受けていたが、年末ギリギリになって新潟地検は不起訴処分を発表した。
記者B 不起訴処分を見越してかどうかはわからないが、梅谷氏は先日(12月17日)、立憲民主党の酒業振興議員連盟に出席したとSNSに投稿していて、「日本酒をさらに世界へと広めていくため、仲間と共に力を合わせて、とことん頑張ります」と。
記者C 不起訴とはいえ、日本酒を配った事実について政治家としての説明責任は残っている。これまで報道機関からの再三の会見要請にも応じておらず、説明責任が果たされているとは言い難い。日本酒の振興を頑張るのはいいが、その前に自らの行動についてとことん説明してほしい。
上越市政震災対応や不信任案など
記者A 今年もと言うのもおかしいのだが、やはり今年も中川幹太市長の言動が注目された一年だった。
記者B 元日の能登半島地震の際、当時に登庁できなったことについて、かなりの市民が不満や不信感を抱いていた。地震から半年以上過ぎ、多くの取材先で、元日の市長の行動を問題視する人が多く、ある種の不思議さを感じたほどだ。
記者A 他社の上越市政などを担当している記者に最近、内閣府の「災害時における市町村長の危機管理」という動画の存在を教えてもらった。首長のやるべき災害対応を3分にまとめた動画で、最初に出てくる最も重要なことが「一刻も早く駆け付けること」とされている。「危機管理においてはトップである市町村長が全責任を負う覚悟で陣頭指揮を取る必要がある」という説明だ。
記者C 当日駆け付けることができなかった中川市長は、オンラインなどで指示できていたと説明していたがその後、衛星電話を自宅に配備した。動画にもあるように基本は駆け付けることだ。先日の定例会見でも「対策本部に到着できるよう努力する」と答えている。
記者A 「多くは工場勤務で高校を卒業したレベルの皆さんで、頭のいい方だけが来るわけではない」──。この1年、上越市政に関して最も話題となったのはこの発言。「西の斎藤、東の中川」と兵庫県知事に並び称され、ニュースも全国区だった。辞職勧告決議は可決され、否決されたが不信任案も出た。この件は、中川市長就任3年の特集記事に詳しく書いたので、ここではその後の話を中心にしたい。
記者B こうした事態を受けて中川市長は、コミュニケーションについて専門家から指導を受けたと言っている。
記者C 最近は以前よりも発話スピードを全体に少しゆっくりにして、単語をはっきりと発音している。自信があるように聞こえる話し方になったように感じられる。しかし、ゆっくりと自信たっぷりな話し方で失言すると、余計に破壊力が増す。余計なお世話かもしれないが、より気をつけた方がいいと思う。
記者B 今月の医療センター病院の改築延期の説明会で、医療スタッフを前に「私としてはどこまで責任を果たせるか分からない」と発言した。関係者から怒りとともに呆れたという声が聞かれた。別の場面では、老朽化で虫が出るという医療スタッフの訴えには、「ルンバ(自動掃除機)を買えばいい」と提案したともいい、関係者をさらに呆れさせている。
記者C この発言について中川市長は「そうした発言はしていない」と否定しているが、複数の病院職員が証言している。
記者A 任期は来年11月までだが、今月の記者会見でも再選出馬の意向については明らかにしていない。
記者B 来年の市長選挙については、さまざまな名前が取りざたされているが、表立った動きにはなっていない。もうとっくに1年を切っている中、新人候補は、ある意味知名度抜群の現職に挑むことになる。年明けから一気に動くのだろうか。
2年連続のアレルギー事故といじめ
記者B 昨年9月に上越市立小学校で命にかかわる重篤な給食アレルギー事故が起き、再発防止に向けて検証が行われたが、1年後の今年9月に再び市立小学校でアレルギー事故が起きた。また市立小学校でのいじめへの対応も問題になった。これらについては、事案もそうだが、組織としての教育委員会の対応も問題だった。
記者C いじめでは、市立小6年児童(当時)が被害者で、十分な検証や対応がなされないまま卒業し、1年以上不登校となった。市教委は、担任が同年3月末の人事異動の際メモなどすべて関係資料をシュレッダーで廃棄した点などが不適切だったとして、今年7月に事案を明らかにして記者会見した。
記者B 2年連続のアレルギー事故は、ありえないとしか言いようがないが、これも市教委の公表内容が被害者側の言い分と異なっていたり、その後の原因究明や安全対策なども食い違いがあったりと、結局双方が弁護士を立て協議するという事態になっている。
記者A 2年連続のアレルギー事故といじめを取材してきて感じたことがある。市教委には、市役所採用の行政官と教員出身の職員がいるが、特に教員出身の管理職は非常に真面目で、個々に見ると教育者としても素晴らしい能力の持ち主なのだろうと思わせる人たちが多い。しかし、組織全体となるとなぜか、首を傾げたくなるような対応になる。これが不思議だ。
記者B いずれにせよ2年連続の事故を経ても変わらないのだから、二度と同じことが起きないよう、徹底的に調査して問題点にメスを入れる改革をしてもらいたい。こういうことこそ、改革を訴えて当選した民間出身の中川市長の腕の見せどころだと思う。
<つづく>
記事参照元:上越タウンジャーナル