『青天を衝け』渋沢栄一の孫 渋沢敬三と西横山集落の縁 小正月行事に関心・撮影
NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公、渋沢栄一の孫に当たり、同番組にも登場した渋沢敬三。実業家、民俗学者として名を馳せ、昭和10年には上越市西横山集落の小正月行事を見学している。同集落にある白山神社の宮司を務める岩片家には、当時の貴重な写真が残され、渋沢敬三とのよすがを今に伝えている。
西横山集落には450年以上の歴史を誇る五穀豊穣(ほうじょう)、子孫繁栄を祈念する小正月行事(毎年2月)が伝わっている。子どもたちが害鳥を追い払う「鳥追い」、火の付いたたいまつで男衆が頭を叩き合い、さいの神を回る「オーマラ」など、その独自な風習は市の無形民俗文化財にも登録されている。
渋沢敬三は柳田國男や折口信夫と並び、日本民俗学の創始者と称される人物。昭和10年2月14、15の両日、同集落の小正月行事に強い関心を持ち来訪。16ミリフィルムのカメラを携え、行事を動画撮影したという。迎え入れたのは白山神社宮司の岩片白銅氏、『桑取谷文化史料』を編さんした斉京守保氏、民俗学研究家の市川信次氏ら。白銅氏の孫で同神社当代の宮司・岩片克己さん(69)は「民俗学を介した文士のつながりがあったのでは」と推測する。
同神社の拝殿には、渋沢敬三が揮毫(きごう)した書が収められている。
文言は「至誠不息 神惟感格」。落款には「昭和十年初夏」とあり、小正月行事を見学した後も同集落を訪れたことが分かる。
◇伝統行事「絶対やめない」
同集落では小正月行事保存会を組織し、伝統継承に向け取り組んでいる。一方で近年は少子高齢化などの要因で担い手が不足し、継承が危ぶまれる年もあるという。岩片克己さんは「渋沢敬三が興味を持ち、目にした桑取谷の原風景が行事とともに今もある。この伝統を途絶えさせないよう、これからも絶対にやめないという思いで取り組んでいく」と話していた。
記事参照元:タイムスLite