放水路の建設予定地に家屋170軒「いつ、どの家が移転対象に?」 新潟上越市の保倉川、掘削ルート公表も説明なく住民から不満の声

集落の西側に放水路建設ルートが示された夷浜集落=上越市

新潟県上越市で計画する保倉川放水路の建設ルートが12月8日、国土交通省によって初めて公表された。

これまで幾度となく水害に見舞われてきた保倉川下流地域の住民からは、早期着工を求める声が上がった。
放水路の建設で移転を余儀なくされる地域は、計画の白紙撤回を長年求めてきたが、近年は「消極的賛成」に転換。

ただ、今回どの家屋が移転対象となるかまでは示されなかったことから「不透明な部分が多い」との不満も聞かれた。

「気候変動」で事業費が550億円→1300億円に…新潟上越市での保倉川放水路建設計画
3キロ掘削でも拭いきれない「内水氾濫」リスク、問われる費用対効果

国土交通省高田河川国道事務所は12月8日、新潟県上越市で計画している保倉川放水路の建設ルートを初めて公表した。浸水被害を防ぐため、保倉川から日本海までの約3キロを掘削する計画で、総事業費は約1300億円に上った。2017年に公表した総事業費約550億円から、倍以上に増加したことになる。国は放水路整備の明確な費用対効果を示しておらず、説明責任を問う声も上がりそうだ。

国は事業費が増えた理由として「気候変動を踏まえた豪雨災害への対応」を挙げる。これまで保倉川放水路は洪水時に毎秒700立方メートルの水を流す目標だったが、全国的な災害の激甚化もあり毎秒900立方メートルに引き上げた。人件費や物価の上昇も要因とする。

国は放水路を整備せずに大規模洪水が発生し保倉川が決壊した場合、浸水面積733ヘクタール、被害人口1万3287人、浸水戸数5185戸、被害額1386億円に上ると見込む。「整備をすれば氾濫被害はなくなる」と説明する=表参照=。

しかし、保倉川下流部は鍋底のような低平地で、豪雨時に河川の氾濫を防げたとしても、市街地に降った雨水を下水道などで排水しきれなくなる「内水氾濫」の恐れは残る。建設計画が了承された12月8日の「関川流域委員会」でも、内水氾濫への対策や、費用対効果の明示を求める意見が出た。

事業を進めるには地域住民はもとより、納税者の理解も必要になる。流域委員会委員長の小池俊雄土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター長は「国民の税金で行う事業の費用が倍以上になる。国は丁寧な説明が不可欠だ」と指摘した。

 

記事参照元:新潟日報デジタルプラス

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