上越市中央5 老舗ラーメン店ニューハルピン 地震で被害 営業再開めど立たず コロナ禍・物価高 苦境に追い打ち 客のため存続目指す

元日に発生した能登半島地震。地震の揺れや津波により、上越市内でも多数の住宅や事業所が被害を受け、生活や営業に支障を来している。上越市中央5にある創業60年以上の老舗ラーメン店「ニューハルピン」は、店舗建物や設備に大きな被害を受けた。修復には多くの時間と費用がかかる見通しで、営業再開のめどは立っていない。

同店は1963年に創業。厨房(ちゅうぼう)のある母屋は築70年ほどで、創業当時から変わらない味とたたずまいが常連客に愛されている。また、バイク漫画に登場したことを機に、全国からライダーが訪れ、ライダーの聖地としても知られる。

現店主の笠原直之さん(57)は2003年、妻の父である初代から店を引き継いだ。以来、客の要望もあって、老朽化した箇所を補修しながら創業時の姿を守ってきた。

地震発生時、笠原さんは市内の別の場所にいた。渋滞に巻き込まれ、自宅のある同店に着いたのは午後8時過ぎ。家屋は倒壊しておらず、ほっとしたのもつかの間、懐中電灯に照らし出された店の内部は、丼や皿が割れて床に散乱。足の踏み場もなかった。厨房は水道管のどこかが破損し、水が漏れ出していた。外壁にはひびが入り、店前の地面には亀裂が走る。

客用の座敷がある、築100年ほどの隣接家屋の廊下部分は床が抜け、2階に続く階段はぶら下がっていた。トイレの戸も開かない。外からは大丈夫なように見えた建物は、どこもかしこもひずんでいた。

新年は4日からの営業を予定していたが、断念。先日、知り合いの業者に破損状況を調べてもらい、市役所の調査も受けた。数日後に調査結果が判明し、建物の状態や、修理にかかる費用の見積もりが分かるという。

ただし、金額によっては費用を回収できるだけの利益を出せるのか、生活していけるのか。見通しが立たず、廃業せざるを得ないかもしれないと、笠原さんは不安を募らせる。

背景には新型コロナによる外食離れや、物価高の影響による売り上げ減がある。

笠原さんは店を引き継いだときから、自身の代で終わりと決めていた。体が動く限り、このままずっと続くと思っていた日常が突然、存続か、廃業かの選択を迫られている。

地震後は、オンラインショップの利用や持ち帰り用ラーメンの購入で支援をするファンもいる。通販の販路拡大に協力の声、仲間から設備の貸し出しの申し出もある。「いろいろな支援を頂き、ありがたい」と笠原さんは感謝する。

不安な一方で「なるようにしかならない」と達観してもいる。それでも「お客さまのために、なるべく良い方向に進めたい」と語る言葉と瞳には、覚悟や力強さがにじんでいた。

当面はラーメンキットの通販と、店舗での持ち帰り販売のみ(午前11時~午後2時)。情報は各種SNSを通じて発信している。アカウント名はいずれも「ニューハルピン」で検索。DMでも受け付けている。

記事参照元:タイムスLite