連載[ルポ人口減少]高田を継ぐ<1>ふるさと 上越市東本町2 「もったいない」と感じた空き家、学生が古書店に

新潟県上越市のシンボル、高田城址(じょうし)公園を中心に広がり、400年の歴史を誇る高田地区。北信越を代表する城下町として活況を呈したこのまちも、人口減少に直面している。目立つ空き家に減っていく商店、存続の岐路に立たされている町内会-。高田を次の世代へ継ぐことはできるのか。まちを訪ねた。(上越支社・川島薫)=5回続きの1回目=

【2022/11/16】

古い雁木(がんぎ)が真っすぐ続く高田地区。東本町2の町家をのぞくと、土間の壁に青年が文庫本や単行本を並べていた。東京在住の大学生、堀田滉樹(こうき)さん(22)。空き家を古書店に改装し、12月の開業に向け準備中だ。

空き家を利用し、古書店「たてよこ」をオープンする堀田滉樹さん=上越市東本町2

高田地区の高土町出身。上越高を卒業後、東京経済大に進学。3年生を終えて開業のため休学している。

本好きが高じて古書店をやろうと決めた。どこに店を開こうかと思案したとき、頭に浮かんだのが空き家が目立つ高田の姿だった。

雁木は道沿いに建つ家から延びる「アーケード」だが、その下の歩道はあくまで家の敷地。雪深い高田の住民は古くから、私有地と屋根を提供してまちなかの往来を確保していた。

「店の目の前に雁木通りがあるから歩く人との距離が近い。コミュニケーションが生まれやすいんじゃないか」。本を整理しながら開業後のイメージを膨らませている。

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堀田さんは東京でも働く。ハロウィーンの余韻が残る11月1日、東京・渋谷のスクランブル交差点で堀田さんと待ち合わせした。

堀田さんは、野菜の配達員や国分寺市の公園で自転車を使った古本販売のほか、渋谷ではパナソニックが設立した若者のワークスペース「100BANCH(ひゃくばんち)」の運営スタッフも務める。

堀田さんは緑色のモッズコートに大きなリュックを背負って現れた。「渋谷でまた会うとは、変な感じですね」と笑う。この日は100BANCHで仕事。渋谷では少し表情が引き締まり、高田で会ったときよりもいくらか大人びているように見えた。

渋谷のスクランブル交差点に立つ堀田滉樹さん=東京

マルチな働き方を志向するようになったのは大学2年のとき。新型コロナウイルスで授業がオンラインに切り替わったことがきっかけだ。まちづくりに興味があり、地方の現場を見てみようと旅に出た。その過程で広島県尾道市のゲストハウスに1カ月滞在する。そこで、空き家を改装して店を開業する傍ら副業も手がける人や、旅の途中で住み着いた人がのびのびと生活する姿に触発された。

リクルートスーツに身を包んで就職活動に励み、卒業したら毎日会社へ行く-。そんな自分を想像できなくなった。「時間も場所も仕事内容も自分で自由にしたい」。卒業後も東京と高田を行き来するつもりだ。

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高田で暮らしていたものの、雁木のある町家には入ったことがなかった。「商店主」目線でふるさとを見ると「まちがうまく活用されずに、もったいない。使い方、発信の仕方があるはず」と感じた。

4月から物件を探し、6年後に物件を買い取ることを条件に格安で借りることができた。「自分が若者による空き家活用の事例になれれば」と意気込む。

古書店「たてよこ書店」=上越市

出店場所は、まちの玄関口の高田駅からあえて離れたところを選んだ。駅から古書店まで人が歩く動線ができれば、自然とにぎわいが生まれるかもしれないと考えたからだ。「雁木は人が歩くためのもの。だったら『歩いていろんな発見をしようよ』と提案したい」

まちの人がちょっとくつろげる居場所になれば-。店名は「たてよこ書店」。縦に長く横に連なる町家のイメージにかけ、店が長く続き、地域全体に広がってほしいという願いを込めた。

連載1回目「ふるさと」
連載2回目「商店」
連載3回目「町内会」
連載4回目「町家」
連載5回目「若者たちへ」

記事参照元:新潟日報デジタルプラス

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