連載[ルポ人口減少]高田を継ぐ<2>商店 上越市北城町4・東本町5 細るまち、頼みはドラッグストア
新潟県上越市のシンボル、高田城址(じょうし)公園を中心に広がり、400年の歴史を誇る高田地区。北信越を代表する城下町として活況を呈したこのまちも、人口減少に直面している。目立つ空き家に減っていく商店、存続の岐路に立たされている町内会-。高田を次の世代へ継ぐことはできるのか。まちを訪ねた。
(上越支社・川島薫)=5回続きの2回目=
【2022/11/17】
午前9時。開店と同時に買い物袋を持ったお年寄りたちが続々と入っていく。新潟県上越市北城町4のドラッグストア「クスリのアオキ 北城店」。カートには医薬品や日用品だけでなく、パンや果物などの食料品が目立つ。店内には野菜や肉などの生鮮食品までもがずらりと並び、その充実ぶりはスーパー顔負けだ。
上越市では主要ドラッグストアチェーン7社の計29店舗がしのぎを削り、そのうち高田地区とその近隣だけでも6店舗を数える。
「高齢世帯や共働き家庭の要望に応えるため、10年ほど前から食料品のラインアップを増やしています」。クスリのアオキ(石川県白山市)の広報担当で村上市出身の小池ひなたさんはそう説明する。利益率の高い医薬品や化粧品はじめ、さまざまな商品を扱うことが強み。「人口が減っている地域にも積極的に出店しています」
体力が衰えた高齢者にとって「1カ所で買い物を済ませたい」という思いは切実だ。人口が減り、高齢化した社会の要請に応えているのがドラッグストアであり、市中心部の高齢者たちにとっては頼みの綱にもなっている。
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「嫁に来た時は『なんて便利な町だ』と思ったけど、どんどん店が無くなっちゃって」。東本町5の文具店「PAPPSヤマモト」に50年前に嫁いできた山本妙子さん(77)は寂しそうだ。
町内の端から端まで歩いて5分ほどの空間に、菓子店やクリーニング店、精肉店、小規模な食品スーパーが軒を連ねたのも今は昔。店主の高齢化や郊外大型店の登場で、多くがシャッターを下ろした。
1970年に652人だった町内の人口もいまは約200人。うち4分の1が75歳以上の後期高齢者だ。
「私はまだ車を運転できるから大きなスーパーにも行けるけど…」と肩をすくめる山本さん。車を持たない住民は週末に家族の運転する車で買い出しに行ったり、食品の配達サービスを利用したりしている。
中には東京や新潟市で暮らす子や孫が月に数回、様子を見に来て、パックご飯や漬け物などの保存食を置いていく家もあるという。
施設や子どもの元に身を寄せる高齢者も増えている。「少し前までアオキに歩いて行くおばあちゃんがいたけど、最近は見なくなったな」と山本さん。商店と同じように住民たちも一人また一人と去っている。
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「ものの見事に心配が的中してしまったよね」。東本町5の町内会長で、1996年から3期12年市議を務めた杉本敏宏さん(76)と、まちを歩いた。
市内では94年の上越ウイングマーケットセンター(富岡)の開業を皮切りに、北陸自動車道上越インター周辺に大型店が続々とオープンした。「黒船」と呼ばれた大型店からまちの商店をどう守るか、市議会でも盛んに議論され、さまざまな支援が行われた。
しかし、その後もインター周辺だけでなく、幹線道路やバイパス沿いに次々と大型店は拡大。車も一人一台の時代となり、「買い物は郊外店で」という流れはむしろ強まっていった。
杉本さんは自宅の本棚にしまってあった20年前の住宅地図を見せてくれた。多くの商店があったと分かる。「もう少し町の空洞化を食い止める手段はなかったのか」。地図を見つめる杉本さんの言葉には、住民たちから期待を託された市議としての自戒の念がこもっているような気がした。
町内会長としてまちの現状を肌身で感じているからこそ、杉本さんは「高田の観光地化」を唱えるいまの市政に対し、強い違和感を覚える。「地域活性化とは、いま住んでいる人の環境をよくすることが先じゃないのか」
連載1回目「ふるさと」
連載2回目「商店」
連載3回目「町内会」
連載4回目「町家」
連載5回目「若者たちへ」
記事参照元:新潟日報デジタルプラス
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