「奇跡が起きた」羽を痛め飛べなくなった白鳥が100キロ離れた場所で発見 白鳥おじさんが奇跡の再会に涙

 

「こんな奇跡が起こるのだろうか…」翼を傷め北に帰れなくなった白鳥が、100キロ離れた場所で発見!富山で世話していた白鳥おじさん、奇跡の再会に感涙。

毎朝、富山市内に飛来する白鳥の数を数えながら、世話をしている富山市の澤江弘一さん。

澤江さん:「あれはカップルです。ハート型になっている。うらやましい…」

今シーズン、富山市内には1000羽を超える白鳥が飛来しました。澤江さんは、白鳥のくちばしの模様で個体識別していますが、識別できる『友だち』もたくさん訪れ、北に帰る準備をしています。

澤江さん:「鼻の先の黒い部分がイコール(=)の形をした『イコール』くんもいましたし、ボチボチと2つの黒い斑点がある『ボチボチくん』もいましたし、もちろん鼻の先に黄色い丸がある特徴的な『おはなちゃん』もいます。そして首がグニュ~となっているのが『首ぐにゅん』です。最初はこの場所を怖がって入らなかったんですけど、今では主みたいな顔しています」

澤江さんは、この冬、週末に新潟県上越市に通っています。片道1時間半、高速料金とガソリン代、往復1万円かけて、わざわざ会いにいく相手は、高田城址公園に一羽でいる白鳥です。

澤江さん:「問題は来てくれるかどうか。遠すぎる。餌をまいた時の音が白鳥までとどかない。それに、今、寝てる」

池で眠る白鳥に澤江さんが「ココー、コココー」と呼びかけました。

すると、昼寝中の白鳥が反応。スッと首をあげ澤江さんを見つめます。

澤江さん:「任せてください。長い付き合いですから。ココーコココー(おいで、おいで、この辺までおいで)」

お腹をすかせいたのか、遠くにいた白鳥が、餌をまく澤江さんのもとにスーっと近づいてきました。白鳥をよくみると…、右の羽を痛めていました。

今から5年前の2018年5月。富山市の田尻池にも羽を傷め、シベリアに帰れなくなった白鳥がいました。家族と別れ、富山に取り残された1羽の白鳥。この白鳥も右の羽を痛めていました。首をコクコクと繰り返し曲げるのは、今から飛び立つサイン。

澤江さん:「こっちに向かって走ってきますよ。がんばれ!がんばれ!」

羽を痛めた白鳥は、池の湖面から一瞬フワっと浮き上がりましたが、飛ぶことはできません。

澤江さん:「飛んで帰られれば一番良いんですけど、それはちょっと無理だという気がします。ただ、奇跡は起こるかもしれません。本人も努力していますから…」

白鳥のような体の重い大型の鳥は、一度羽を痛めると再び飛べることはないと専門家はいいます。

取り残された白鳥に寄り添うことを決めた澤江さん。餌やりだけでなく、暑さをしのぐための『ねぐら』をつくったり、ボートに乗って池の水草を刈り取ったりするなど、四六時中、白鳥のことを考えていました。次第に澤江さんが、白鳥のように見えてきました。どうしてそこまで白鳥に尽くせるのか澤江さんに聞くと…。

澤江さん:「その心の隙間がどういうわけか白鳥のような形をしていたようで、そこに白鳥が入るとポンと埋まるっていう感じで…」

自宅ではユニークなトレーニングに励んでいました。

澤江さん:「最近やっているのは、この運動です。これを50回です」

ディレクター:「それは何ですか?」

澤江さん:「これは白鳥の羽ばたきを見習った運動です。『ムネニク』を厚くしようと思いまして…。大胸筋ではなく『ムネニク』です。鳥の気持ちになって…」

そして、澤江さんは言いました。

澤江さん:「私は白鳥です。白鳥だと思ってみてほしい」

白鳥は、7月から8月にかけ羽が生え変わります。そして、9月、白鳥が軌跡を起こします。傷めていた羽を羽ばたかせ、池を飛び出したのです。「帰ってこれるのだろうか…」その一部始終を見ていた澤江さんは、喜び、驚きよりも、心配が先にきました。

白鳥が、飛べるのは10キロほどでしたが、その後、白鳥は、毎年、秋になると2か月ほど、自由に飛びまわりました。1度目の秋は田尻池から約5キロ離れた別の白鳥の飛来地に移動。それからも場所を転々としました。

澤江さん:「こんなところきて、どうするが?餌もあげれんぜ」

2年目の秋はさらに流れの速い大きな川に移動。さらに、3年目の秋も、羽が生え変わったら、あちこちと場所を移しました。でも、その度に澤江さんが、白鳥を見つけ、一日も欠かすことなく餌をあげました。

澤江さん:「いや~よくみつけた。さすが私!必ず見つけて必ず餌をあげるから…。でも、できればこの辺でゆっくりしとってくれたらありがたいんだけど…」

しかし、迎えた4度目の夏の終わり。白鳥が忽然と姿を消しました。探し続けましたが、見つけることができません。澤江さんは、あの白鳥がいないとわかっていても、もしかして、戻ってきているかもしれないと、毎日毎日、これまでいた場所をめぐっています。

澤江さん:「いつもならあそこにいるのに、呼んだらくるがにな…。帰ってきたくてもかえってこられないのかもしれない。行方不明が一番つらいかもしれませんね。元気でいてくれることを祈るだけですね」

白鳥が姿を消してから1年と2か月のときが流れました。そして、去年10月、信じられない情報が舞い込んできました。新潟県のタウン情報誌に、あの白鳥と同じ右の羽を傷めた白鳥が掲載されたのです。その写真と映像を見た澤江さんは、絶対にあの白鳥だといいます。

澤江さん:「シルエットみただけでわかる。4年も5年もみた白鳥だから。この顔の大きさ、顔つきみると完全にアイツ。どうしようもなく、アイツです。田尻池にいたときのアイツにしかみえない」

澤江さんは早速、確認のため100キロあまり離れた現地に向かいました。しかし、行ってみると堀を覆いつくすハスで、その姿が確認できません。捜索すること5時間。ついに右の翼を傷めた白鳥を見つけました。澤江さんがそっと白鳥に近づきます。

澤江さん:「泣けそう…。近くで見ると間違いないです。普段見ていたアイツです。出て来る『オーラ』がアイツでしかない」

ディレクター:「澤江さんのことを覚えていますかね?」

澤江さん:「覚えていなくてもいいですよ。生きているんだから。私のことを忘れていても、こうやって命をつないでいるんですから…。それで十分です。でも、米をあげたい」

澤江さんは、涙を流し、再会を喜びました。

澤江さん:「またくるよ。それまで、元気でおられ」

毎朝、餌を楽しみにしている富山の白鳥たち。そして、週末がくるのを楽しみにしている新潟の白鳥。週末ごとに新潟と富山を行き来する生活が始まりました。以降、20回以上、あの白鳥のもとに通ったといいます。

澤江さん:「新潟県のみなさまにお預けしたというのが寂しいですけど、その辺はちょっと…。近くにいてくれれば、毎日顔みられたんですけど…」

再び、あの白鳥との物語が、動き出します。

記事参照元:© 株式会社チューリップテレビ

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