上越市出身の日本画家、柴田長俊さんの回顧展 小林古径記念美術館で6月23日まで
新潟県上越市出身の日本画家で2022年に亡くなった柴田長俊さんを回顧する展覧会「祈りの心象 柴田長俊展」が上越市本城町の小林古径記念美術館で開かれている。2024年6月23日まで。2章で展示する日本画やデザインしたステンドグラス作品を通し、生涯にわたる柴田さんの作品世界に触れることができる。
柴田さんは1949年、同市西城町生まれ。国内の著名な日本画家が所属する創画会会員で、長野県軽井沢町を拠点に創作活動を続けた。濃い青色の空と月を描いた日本画をはじめ、上越妙高駅や上越市内の公共施設に設置されているステンドグラス作品をデザインするなど、市民にも広く知られていたが、2022年1月に闘病の末、72歳で亡くなった。
回顧展は柴田さんの死去後、上越市内では初めて開かれた。会場では「生と死の祈り・聖地巡礼」と題した1章、「故郷の風景を描く―久比岐野十二景―」の2章のほか、ステンドグラス作品が展示された。
1章では、民俗学に興味を持ち、学生時代に中東などを旅した柴田さんが、各地で葬礼など人々の生と死に関する信仰や祈りなどの姿を取材から感じて描いた心象風景作品を展示した。「(作品を)見ている人がどう感じるか。いろんな解釈をしてくれればいい」という生前の柴田さんの思いから解説は一切ない。
2章では、故郷上越の風景に目を向けた柴田さんが2001年から4年間にわたり描いた上越の四季12作を展示した。加賀街道の松、桜が咲く青田川の堤防、坊ヶ池に映った星空、明け方の高田城址公園と蓮など、1月〜12月の姿を桐板に描いた。同館によると柴田さんの故郷への思いを込めた「連作叙景詩」ともいうべき作品で、同館統括学芸員の笹川修一副館長は「上越の風土に内在する自然への祈りが感じられる。柴田さんの言葉とともに展示した。四季折々の風景とともに故郷に対する柴田さんの心の光景を感じて」などと話した。
日本画作品のほか、デザインしたステンドグラス作品も飾った。妻、法子さん(63)によると、柴田さんはステンドグラスを通して映り込む光に魅了され、日差しの方向や時刻によって光の写り方の変化を好んでいたという。ステンドグラスは旧上越観光物産センターや雁木通りプラザ、高田駅など、市内の公共施設で設置されており、各所の作品は会場でプロジェクターによって映し出され、会場で鑑賞できる。
また、法子さんが柴田さんを語ったインタビュー記事も館内に展示された。会場を訪れた法子さんは柴田さんを「良くも悪くも天真爛漫な人。生きていることを楽しみ、絵も楽しんで描いていた」と振り返った。また「上越の人たちから支えてもらい、制作を続けてくることができた。支えてきてくださった方たちにお礼を申し上げたい」と感謝していた。
会期中は学芸員によるギャラリートークを開催。4月27日、5月25日、6月8日の計3回。時間はいずれも午後1時30分から。参加は無料だが、入館料が必要。
開館時間は午前9時〜午後5時。4月1日〜14日は午後7時まで延長開館する。休館日は月曜と祝日の翌日。観桜会期間中の3月29日〜4月14日、ゴールデンウィーク期間は無休。入館料は一般510円、小中学生、高校生260円。幼児、上越市内の小中学生は無料。障害者手帳、ミライロID提示で入館料半額。5月18日は国際博物館の日を記念し、入館無料。同館で所蔵する柴田さんのすべての作品、市内公共施設に設置されているステンドグラス作品が掲載された小冊子「柴田長俊作品集」を1冊300円で販売。A5判32ページ。
このほか、上越市本町5のギャラリー祥でも「柴田長俊展―雪から青―」が開かれている。4月21日まで。午前10時30分〜午後6時。月曜休廊。
記事参照元:上越タウンジャーナル