連載[ルポ人口減少]高田を継ぐ<3>町内会 上越市仲町3・大町5 豪雪時に感じた「限界」、活路は「対話」
新潟県上越市のシンボル、高田城址(じょうし)公園を中心に広がり、400年の歴史を誇る高田地区。北信越を代表する城下町として活況を呈したこのまちも、人口減少に直面している。目立つ空き家に減っていく商店、存続の岐路に立たされている町内会-。高田を次の世代へ継ぐことはできるのか。まちを訪ねた。(上越支社・川島薫)=5回続きの3回目=
【2022/11/18】
居酒屋やスナックが軒を連ねる新潟県上越市の仲町。日々のストレスを酒で洗い流す酔客たちであふれた県下有数の繁華街だ。
ネオンがきらめき、客待ちのタクシーが列を成した-。先輩記者から往時のにぎわいぶりを聞いていたが、新型コロナウイルスの影響もあり、2年前に上越支社に赴任した私自身は「きらめくネオン」を見たことがない。
「ここと、ここも空き物件。このビルも」。仲町3の町内会長石崎博己さん(75)は、明かりのつかない看板を残したまま営業を止めた店を指さした。「看板の撤去にもお金がかかるからね」と石崎さん。
仲町3には町屋や飲食店のテナントなど250の物件が集中するが、このうち石崎さんが把握しているだけで25件が空き家になっている。所有者が町内で生活していないケースも多く、実態把握は難しいという。
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石崎さんが町内存続の危機を現実のものとして意識するようになったのは、2021年1月の豪雪だ。
高田では8日から急速に雪が降り積もり、24時間で観測史上最高の103センチを記録。11日には最深積雪は249センチに達した。
9年ぶりに一斉雪下ろしが行われたが、仲町3は1人暮らしの高齢者が多く、他の町内のように除雪業者の確保もできなかった。2、3日では作業は終えられないと判断。一斉雪下ろしへの参加を見送り、2週間ほどかけ、近所同士で助け合いながら流雪溝に雪を捨てていった。
石崎さんを含めた4人の町内会幹部たちは「雪害対策本部」を立ち上げ、流雪溝のポンプ操作や見回り、トラブル対応に追われた。「あの時は本当にしんどかった。町内会幹部は自分の家の雪下ろしもろくにできなくて」。幹部たちも高齢だ。石崎さんは「もう限界だった」と振り返る。
住民が少ない上、勤めに出ていれば町内会の仕事をするのは難しい。「後継者不足は目の前に立ちはだかる問題だ」。石崎さんの悩みは尽きない。
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空き家のチェックに除雪の手配、高齢化する住民のケア…。高田の町内会の仕事は多岐にわたる。
市文化財の旧今井染物屋をはじめ風情ある町家が並ぶ大町5も、全体の約2割に当たる18件が空き家だ。町内会長の松倉康雄さん(74)は住宅地図を見ながら「所有者とも連絡が取れるし、うちはまだましだよ」と話し、腕を組んだ。
町内の人口は212人。そのうち75歳以上は5分の1に当たる47人。まちを次の世代へどう継いでいくか。松倉さんは町内に呼びかけ、将来像を考えるプロジェクトチームを発足させた。
メンバーは30代の若手や女性も含む8人。「あまり声を上げてこなかった人たちの意見を聞きたい」と松倉さん。空き家や町内会運営、子育て環境について自由に意見を出してもらう。
10月1日、町内会館で顔合わせが行われ、松倉さんは集まったメンバーたちに、「5年後10年後、さらに空き家は増える。これからどういうまちづくりをするべきか話し合おう」と、力を込めて呼びかけた。
「具体的な解決策を出すのは難しくても、世代や性別を超えて住民同士が話し合うことに意味がある」。松倉さんは試行錯誤の先に未来があると信じている。
連載1回目「ふるさと」
連載2回目「商店」
連載3回目「町内会」
連載4回目「町家」
連載5回目「若者たちへ」
記事参照元:新潟日報デジタルプラス
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