連載[ルポ人口減少]高田を継ぐ<4>町家 上越市大町3 市営シェアハウスの試み、民間活用にコストの壁
新潟県上越市のシンボル、高田城址(じょうし)公園を中心に広がり、400年の歴史を誇る高田地区。北信越を代表する城下町として活況を呈したこのまちも、人口減少に直面している。目立つ空き家に減っていく商店、存続の岐路に立たされている町内会-。高田を次の世代へ継ぐことはできるのか。まちを訪ねた。(上越支社・川島薫)=5回続きの4回目=
【2022/11/22】
土をたたいて固めた三和土の土間(たたきどま)を通り抜けると吹き抜けの天井が気持ちいい。太い梁(はり)が和の雰囲気を醸し、壁の漆喰(しっくい)は白さがクールで現代建築のよう。
「和モダン」な空間に生まれ変わった町家は、新潟県上越市が大町3の空き家を改装した全国でも珍しい市営シェアハウスだ。
「風情ある町家に住んでるっていうのが、気持ち的にいい感じ」「古いイメージだったけど、きれいに改装されてるし、全然住めるよね」。住人の大学生の会話は弾む。市外出身の2人は大学からのあっせんで入居を決めた。
この「シェアハウス大町」は、市が町家の活用促進を図ろうと2017年に整備した。学生に限り最大5人が入居可能で、家賃は2万5千円前後と格安。新型コロナウイルス禍以前は、地域住民との交流も盛んに行われていた。
土間の奥はカウンター型キッチンを備えた共有のダイニング兼リビングで、2階に個室が五つある。入居者は自室で1人の時間を過ごし、食事を取ったり、寂しくなったりすると共有スペースに下りて団らんする。
記者も1晩だけ泊まってみた。町家の難点とされる壁の薄さや寒さはそれほど感じなかった。市の担当者によると、耐震補強を施し、壁には断熱材も入れたという。
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市はこのシェアハウスをモデルケースに、空き家となった町家の利活用をPRしている。しかし、民間が始めるには課題も多い。
市はシェアハウス大町の整備に、改装代や土地・建物の取得費も含めて総額約3400万円をかけた。
市内の物件に詳しい五月不動産(仲町4)の中屋宏営業部長(53)は「その金額なら、市内の相場で新築1軒を建てられますね」と指摘する。不動産業者たちは「家賃との兼ね合いを考えても、民間がやるとなると、なかなか採算が取りにくいのでは」と声をそろえる。
築100年超もざらにある町家は、耐震構造が現在の建築基準法に基づいていないケースが大半。ガスや電気の配管、トイレや風呂など水回りのリフォームが必要になることも多い。
不動産業「北陽」(大町2)の代表取締役で、空き家の管理や活用などの相談に当たる「空き家相談士」の資格も持つ羽尾友成さん(54)は、「町家の改装にはお金がかかる。空き家があっても『同じ金額をかけるなら』と郊外の戸建てを選ぶ人が多いのが実情だ」と悩ましげだ。
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市によると、高田地区の人口密度は20年時点で1ヘクタールあたり59・4人。市は34年までに80人とする目標を設定しているが、人口密度の低下傾向は20年以降も続いているとみられ、増加に転じるめどは立っていない。
市は高田地区の定住人口を増やそうと本年度、本町や大町など5町内を対象に、町家の耐震・耐火補強や建て替え時の隣家の外壁の修復の補助を始めた。
今後10年以上居住することが条件。100万円(子育て世帯は130万円)を上限に、経費の半額補助を打ち出したところ、これまでに、子育て世代を含めて計7件の利用があった。
「準備した予算も残り少しとなり、期待通りの利用状況だ」と手応えを口にする市都市整備課。取り組みは始まったばかりだ。
連載1回目「ふるさと」
連載2回目「商店」
連載3回目「町内会」
連載4回目「町家」
連載5回目「若者たちへ」
記事参照元:新潟日報デジタルプラス
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