アジアを代表する「若き才能30人」に新潟上越市出身の樋口翔太さん(26)・米フォーブス誌が選定 長岡高専でロボット開発技術習得、筑波大発ベンチャー経営
米経済誌フォーブスが次世代をけん引する若い才能に光を当てる賞に、筑波大学発の人工知能(AI)ロボットベンチャーCloser(クローサー、茨城県)の樋口翔太社長(26)が選ばれた。新潟県上越市出身で、長岡工業高専に進学。自作ロボットの性能を競う世界大会で優勝するなど、ロボット開発に打ち込み、筑波大大学院に進んだ。受賞をきっかけに「海外でのチャレンジにつなげていきたい」と意欲を語った。
賞は「30UNDER30ASIA2024」。日本を含むアジア太平洋地域を対象とした各分野で活躍中の30歳未満の人材を選出している。10部門で30人ずつの計300人が受賞し、樋口さんは「産業・製造・エネルギー分野」で選ばれた。
クローサーは2021年11月末に設立。食品や化粧品、医薬品業界向けに、包装や箱詰めを自動化する産業用ロボットを、開発から販売まで手がける。AI画像処理と制御技術を活用し、製造工程で不可欠な繰り返し作業の自動化を図っている。目指すビジョンは「繰り返し作業や重労働はロボットに任せて、人がより創造的な活動に注力できる世界の実現」だ。
ロボットは、移動させるモノの大きさに応じた2種類。人と同程度の大きさで、専門知識がなくても使える操作性や、多品種少量生産に対応していることが特徴だ。中小規模工場でのロボット導入のハードルを下げようと、数年で投資回収できる価格を意識し、1千万円前後に抑えている。
フォーブスからは「低コストのロボットが、製造業の人手不足解消に役立つことを期待している」と評価を受けた。投資家から1億円の資金調達を達成するなど、周囲の期待感も考慮された。
樋口さんは今回の選出について、フォーブスのアワードには日本版もあることから「先にアジアで選出されたのは驚いた」と率直に語る。
小学生時代からロボット開発にのめり込んだ。長岡高専時代のアルバイトをきっかけに、食品産業で自動化が遅れていることを知り、AIやロボ技術で解決しようと起業した。現在はアルバイトを含めて約20人の従業員を率い、自ら営業や打ち合わせに走り回っている。
人手不足が加速する中小のものづくり企業では、ロボット導入が生産性向上の鍵を握るとみる。「新潟の企業とも仕事をしたいし、グローバル展開も前提に事業を進めていく」と話した。
<30UNDER30>米経済誌フォーブスが2011年から開催し、30歳未満の次世代をけん引する若い才能に光を当てる企画。米国版、欧州版など25カ国・地域で行われている。アジア版では、米大リーグのドジャースで活躍する大谷翔平選手も、2018年に選出されている。本県関係では、16年にアプリ開発フラー(新潟市中央区)の渋谷修太会長が選出された。